メニュー 閉じる

民事訴訟判例の読み方 #1「判決文の構成」


私事ながら行政書士試験の合否がわかるまであと10日なので、2ヶ月くらい待っている時点でちょっと持たない気がしていましたがいざ近づくとかなり緊張してきました。

ということで、行政書士試験で学んだことを活用する企画として「判例の読み方」をやります。
確かに他の士業系資格に比べたら180分の絶対評価の筆記試験のみなので専門性が高いとはいえないですが、違憲審査・行政訴訟・民事訴訟あたりの判例はかなりの分量を読んで試験に挑む必要があります。現に編み物ユーチューバー著作権裁判の判決文を読んだときには試験に向けて学習する前と比べたら明らかに判例を読むことに抵抗がなくなっていて、このために勉強したといっても過言ではないように思いました(それは過言かと)。

現時点で、いわゆる編み物ユーチューバー著作権裁判については裁判所判例検索では出てきません。
個人情報の削除・修正ののちに掲載されるようなので、2022/01/16現在で掲載されている京都地方裁判所の最新の判例は2021/11/15の刑事訴訟の判決です。公開されている判例は以下から検索ができます。
関連リンク:裁判例検索

題材にする判例はなるべく既に公開されているもので当サイトを閲覧している方の関心が高いものにしたいので、平成22年(ワ)第39994号の東京地方裁判所平成23年12月26日判決、編み物の著作物性についての争いであったいわゆる「三角パズルベスト事件」を扱います。
なお、この判決については東京地方裁判所の判決を不服として知的財産高等裁判所に控訴されているのですが、とりあえず今回は地方裁判所の判例の読み方を扱います。
関連リンク:平成23年12月26日判決

この判決は33ページです。編み物ユーチューバー著作権裁判は22ページでしたが、それに比べて長いことには一応理由があるようです。
本日はまず全体的な構成のつかみ方を書いていきます。

日付

判決の言い渡し期日(改行)、事件番号(改行)、口頭弁論終結日の3行にわたって記載されています。
三角パズルベスト判例もわりと難しい事件だったようで、結審から判決までに原則を超える2ヶ月以上を要しています。

判決

原告の住所・氏名と代理人弁護士の氏名、被告の住所・氏名と代理人弁護士の氏名がそれぞれ記載されます。
判例がインターネット上で掲載される場合は市区町村までの住所と原告・被告各当事者が個人の場合はそれぞれの氏名はアルファベット1文字(三角パズルベスト判例では原告「P」と被告「Q」)に置き換えられ、個人情報が削除・修正されます。

主文

民事訴訟の判決言い渡しは主文の読み上げのみで終わります。
実際には勝訴・敗訴はそこまで簡単なものではないですが、原告勝訴の場合「被告(ら)は〜」、原告敗訴の場合「原告(ら)の〜」という形式になります。
三角パズルベスト判例の主文は「原告の請求をいずれも棄却する。」「訴訟費用は原告の負担とする。」という原告敗訴という結果でした。正直言って編み物をする人からするとかなり被告らに非があるように思える部分も多いのですが、一方で編み物が著作物として認められにくいということがわかる判例でもあるように思います。

事実および理由

請求

原告が提訴したときの請求内容です。
三角パズルベスト判例では660万円の損害賠償および、侵害されたとされる作品の展示・販売・販売の申し出の差し止めや、物品の廃棄、謝罪広告の掲載を請求しています。

事案の概要

事実についての概要ののち、次のようなことが記載されます。
・前提事実(当事者、損害賠償請求等の原因となった事実関係)
・争点(三角パズルベスト判例では5つ(そのうち1つがさらに細分化されている))

争点に関する当事者の主張

それぞれの争点について、原告及び被告それぞれの主張の概要が記載されます。
三角パズルベスト判例はかなり争点が細分化されているので、判決文が長い理由は主にこの「争点に関する当事者の主張」がかなりの分量を占めていることのようです。

当裁判所の判断

ここがいわゆる「判決理由」であり、裁判所がそれぞれの争点について判断した理由が記載されます。判決文で最も重要な箇所です。事件の流れを既に把握していればここを主に読むことになります。

著作権法は,著作権の対象である著作物の意義について「思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものをいう」(著作権法2条1項1号)と規定しているのであって,当該作品等に思想又は感情が創作的に表現されている場合には,当該作品等は著作物に該当するものとして同法による保護の対象となる一方,思想,感情若しくはアイデアなど表現それ自体ではないもの又は表現上の創作性がないものについては,著作物に該当せず,同法による保護の対象とはならない。

平成23年12月26日判決

判決理由ではこのように「○○の場合では保護の対象となる一方、そうでない場合には保護の対象とならない。」などと根拠となる法律と基準を示した上で、「この場合はどちらに該当するか」という裁判所の判断という構成になる場合が多いです。
三角パズルベスト判例では争点はかなり多かったにもかかわらず、原告編み物と原告編み図の著作物性そのものを否定する判決理由のため、それ以上は判決理由として検討されないということになっています。

小括

これはあったりなかったりするようですが、三角パズルベスト判例ではそれ以外の争点について示すまでもなく理由がないとされています。

結論

原告勝訴の民事訴訟で損害賠償請求が全額認められることは少ないので、「以上によれば、原告の請求は上記の限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。」、原告敗訴の場合は「したがって,原告の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとし,主文のとおり判決する。」などといった形式で終わり、最後に担当裁判官の署名があります。

Posted in 知的財産権全般

関連投稿