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民事訴訟判例の読み方 #3 「判決理由の読み解き方」


必要に応じて「高等裁判所判決の読み方」などもやりたいですが今やることでもない気がするので、続くことはあるとは思いますが今日で一旦締めます。

判決文において最も重要な「判決理由」、実際の判決文の中では「当裁判所の判断」の読み方を扱います。
昨日までに引き続き三角パズルベスト判決、また関連してGoogle検索結果訴訟の判決(厳密には最高裁判所決定)を扱います。

基本的な読み方

今後の判決や同じような事件への指針を示すためか、「判決の根拠となる法律の解釈」や「事例に対する判断基準」を示した上で、その判決のもとになる事実がそれにあてはまるかあてはまらないかを述べていく形式が多いです。
筆者が行政書士試験の学習で読んだ行政訴訟・民事訴訟あたりの判例はたいていそのような構成です。
最高裁判所でのいわゆる違憲審査の判例でも、簡単に書くと「○○の権利は憲法で保護されるが、この場合は保護に値する/この場合は保護できる範囲を逸脱している」というような判断が多かったです。

事例1:三角パズルベスト

著作権法は,著作権の対象である著作物の意義について「思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものをいう」(著作権法2条1項1号)と規定しているのであって,当該作品等に思想又は感情が創作的に表現されている場合には,当該作品等は著作物に該当するものとして同法による保護の対象となる一方,思想,感情若しくはアイデアなど表現それ自体ではないもの又は表現上の創作性がないものについては,著作物に該当せず,同法による保護の対象とはならない。

平成23年12月26日判決

このように著作権法の保護の対象となるものとならないものを最初に示しています。このあとに原告編み物と原告編み図について検討した上で次のように結論づけています。

したがって,原告編み物に著作物性を認めることはできない。これに反する原告の主張は採用しない。

平成23年12月26日判決

したがって,原告編み図に著作物性を認めることはできない。これに反する原告の主張は採用することができない。

平成23年12月26日判決

三角パズルベスト判例は編み物をする人から見れば被告らに非があるように思える部分も多く納得できない部分もある判例です。誤解なきように書いておくとこの判決では原告の作品の著作物性そのものを否定しているので、被告らが侵害をしているかどうかは検討するまでもないという判断です。おそらく服飾小物やウェアなどを含む実用性の高い、また普遍性の高いもの全般について著作物としては認められにくいので、同一・類似に見える場合でもむやみに著作権侵害と断じるわけにはいかないというのがこの判例から学べることのように思います。

事例2:Google検索結果

本件は,抗告人が,相手方に対し,人格権ないし人格的利益に基づき,本件検索結果の削除を求める仮処分命令の申立てをした事案である。
(中略)
検索事業者が,ある者に関する条件による検索の求めに応じ,その者のプライバシーに属する事実を含む記事等が掲載されたウェブサイトのURL等情報を検索結果の一部として提供する行為が違法となるか否かは,当該事実の性質及び内容,当該URL等情報が提供されることによってその者のプライバシーに属する事実が伝達される範囲とその者が被る具体的被害の程度,その者の社会的地位や影響力,上記記事等の目的や意義,上記記事等が掲載された時の社会的状況とその後の変化,上記記事等において当該事実を記載する必要性など,当該事実を公表されない法的利益と当該URL等情報を検索結果として提供する理由に関する諸事情を比較衡量して判断すべきもので,その結果,当該事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合には,検索事業者に対し,当該URL等情報を検索結果から削除することを求めることができるものと解するのが相当である。

平成28年(許)第45号

これは厳密には判決ではなく、決定(最高裁判所の法廷を開くまでもなく棄却された事案)なのですが、決定にしては最高裁判所が判断した根拠が明確なので取り上げたいと思います。

実はこの判例は原告の人格的利益が侵害された(この場合は検索結果に原告の逮捕歴が出ること)とする民事訴訟だったのですが、人格的利益を認めてしまうと他者の利益や権利(この場合は検索事業者の表現の自由)をかえって侵害してしまう場合が多く、他者の利益や権利を侵害しない範囲での人格的利益を認めることができるのは限られた範囲になります。編み物ユーチューバー著作権裁判の京都地方裁判所判決で認められたのはその限られた範囲に収まる人格的利益だったといえることとなります。

この決定では基準として「当該事実を公表されない法的利益」と「検索結果として提供する理由に関する諸事情」を比べて、前者が明らかに大きい場合には検索結果を削除できるとしています。この上で、この件について検討しています。

以上の諸事情に照らすと,抗告人が妻子と共に生活し,前記1(1)の罰金刑に処せられた後は一定期間犯罪を犯すことなく民間企業で稼働していることがうかがわれることなどの事情を考慮しても,本件事実を公表されない法的利益が優越することが明らかであるとはいえない。

平成28年(許)第45号

要するに、上の引用にはないものの検索結果が公共の利害に関するといえること、検索結果にかかわらず原告(この場合は抗告人)が家庭や職業を持ち問題なく社会生活を送っていることから、この場合は削除できる場合にあてはまらないという判断です。
一方で、例えば何らかの公表されたくない情報が検索結果に表示されることで「離婚した」「解雇された」「就職ができなくなった」などの現実的な不利益が生じている場合には検索結果が削除できる可能性があるとも解釈できます。

筆者もまた迷惑な検索結果(自分にとってはどうでもいいものの大学の後輩に迷惑がかかりかねない検索結果)に困っているのですが、こういったものからすると裁判によって解決するような性質のものではなさそうです。「京都大学 農学部 教員免許」で検索!

Posted in 知的財産権全般

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