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二次創作と著作権 #1 「恐山ル・ヴォワール」


ついに当サイトにも持ち込んでしまった、20年近くにわたって筆者の一番好きな作品です。

広い意味ではアニメや映画や実写ドラマなども権利者の許諾を得た二次創作、厳密には二次的著作物というわけですが、ここではもっと狭い意味でのいわゆるファンアートなどのような権利者に無断の二次創作について扱います。タイトルの付け方からするとシリーズ化したいところです。

筆者の一番好きな漫画であるシャーマンキングの劇中詩「恐山ル・ヴォワール」については、いわゆる元は無断の二次創作についていい意味で普通ではない展開があったのですが、そのことを扱いたいと思います。

2010/10/03 ニコニコ動画に「【初音ミク】恐山ル・ヴォワール【オリジナル】」が投稿される

こちらの動画です。2021年1月現在、再生数は81万回です。YouTubeの感覚に慣れている人からしたらものすごく多いわけではないと感じるかもしれません。
関連リンク:【初音ミク】恐山ル・ヴォワール【オリジナル】

全く知らない方のために説明すると、いわゆるボカロPのかぴたろう氏が、シャーマンキングの劇中詩「恐山ル・ヴォワール」に、いわば勝手に曲をつけたものです。
2010年頃のニコニコ動画は今のYouTubeなどに比べるとに著作権に関して意識の高い動画投稿者はあまりいなくて大概そんな感じのものが多かったので、おそらく当時は一部のシャーマンキングのファンを中心に話題になっている程度でした。
ちなみに筆者個人はこの時期は受験勉強に追われていたのでこの動画をリアルタイムではよく知りません。その時期については「高校では高校でしかできないことをやるべきだけど受験勉強は高校を卒業してもできるから」などと意味不明な供述をしています。申し訳ございません。

しかし、本来は順序が違うであろう(?)事後報告に対し、原作者の武井宏之先生およびスタッフは「二次創作活動をどちらかといえば歓迎する」「もし恐山ル・ヴォワールが映像化される機会があったら是非エンディング曲にしたい」という旨を返信していたとのことです。紛らわしいですが「恐山ル・ヴォワール」は劇中詩であるだけではなく、それが出てくる一連のエピソード、主人公とヒロインが10歳にして結婚を決意する(何言ってるかわからないかもしれないですがそのままです)重要な過去編の名称でもあります。

2011/10/21  ニコニコ動画に「【恐山アンナ】恐山ル・ヴォワールを歌ってみた【マンキン復活】」が投稿される

こちらの動画です。「恐山アンナ」とはシャーマンキングのヒロインにあたるキャラクターの名前で、当初はこの名義・動画説明は「シャーマンキング復活によせて歌ってみた(アンナ)」のみでした。
関連リンク:【恐山アンナ】恐山ル・ヴォワールを歌ってみた【マンキン復活】

あまり当時のニコニコ動画について知らない人のために補足しておくと、他のユーザーが投稿したボーカロイドの曲やその他オリジナル曲がまた別のユーザーの「歌ってみた」によってより注目されたり人気を集めたりすること自体はよくあることでした。
声は恐山アンナを担当した声優・林原めぐみさんに酷似している、また用いられているイラスト(本日のサムネイル)も原作の武井宏之先生の絵柄に酷似しているものの、その正体は謎に包まれていました。
一時期はコメントが「本人だ」「本人じゃない」で荒れている様相でしたが…?
筆者はリアルタイムでこの件は知っていたものの(YouTubeでいうところの「急上昇」にあがっていたので)、当時の素人のやることにしては色々とクオリティが高すぎるので本人の見込みが高いかなという程度に思っていました。

2011/11/08 上記の動画が本人歌唱・原作者によるサムネイルであることが公表される

本人じゃないと書き込んだ人。どうか恥じることのなきように。
本人だと書き込んだ人。どうか責める事をせぬように。
どちらも【愛】なのだからね。

めぐさんより:恐山アンナ、「恐山ル・ヴォワール」を歌ってみたの林原的真相!

いわゆる「本人降臨」としてさらに話題となりました。
動画説明に追記されている「125万回再生」というのは、ちょっとキリが悪いようですが「125万」が作中で大きな意味を持つ数字なので取り上げられています。現在は300万回を突破しています。
ちなみにシャーマンキングに関わる諸権利は現在は講談社に移っていますが、当初は集英社の週刊少年ジャンプの連載で2011年当時はジャンプ改(現在は休刊)で続編が連載されていました。限定CDはさすがに筆者も持っていません。
これほどまでに元はファンによる無断の二次創作であった曲が原作者や担当声優に公認されているだけでも驚くべきことですが、これで終わりではありませんでした。
ちなみに、筆者の知る限りどちらもYouTubeに公式の動画はアップされていません。他のユーザー本人のチャンネルから投稿された「歌ってみた」以外は無断転載の可能性が高いので、できる限りニコニコ動画でご覧ください。

「もし恐山ル・ヴォワールが映像化される機会があったら是非エンディング曲にしたい」

2021/11/25 SHAMAN KING 第33廻「恐山ル・ヴォワール qutre4」のエンディングとして使用される

出版社の移籍、元は無断の二次創作であること、その他色々な大人の事情で原作者が望んでいようと実現は困難であろうと思われていたにもかかわらず、実現してしまいました。これだから20年近くファンでいられる。
これ以前の2021/11/21に恐山ル・ヴォワール4話分の先行上映があったのですが、おそらくそれをご覧になった方のほとんども重要なサプライズとして秘密にしておいてくださったのだろうと思います。
元の曲が6分30秒と長いのでエンディングとしてはもう少し短くなっていました。
とにかく曲が使用されたタイミングとか色々と完璧すぎて、そしてこの10年20年の思いがいろいろこみ上げてきて、そして関わってきたあらゆる人々の愛を感じて筆者は泣きました。

この件は原作者や担当声優の思い、作曲者の原作をリスペクトする気持ち、そしてファンを含むすべての関わってきた人の愛がもたらした理想的な展開で、なんでもそのようにうまくいくわけではないというのはわかっているのですが、どうしても書きたかったので書きました。

Posted in 知的財産権全般

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