商標権の拡大解釈を許さない市民の会
これについては動画も投稿しました。よろしければご覧ください。一番話したかったのは「ゆるキャラ」のことです。
関連リンク:行政書士VTuberエリマコト 商標登録の目的と意義
商標登録の目的
商標は特許・実用新案・意匠と同じく特許庁に出願する産業財産権に分類されますが、他の3つとは目的から大きく異なる部分があります。
この法律は、商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的とする。
商標法第1条
「需要者の利益を保護」というのは商標法に特有の目的です。また、発明等の技術を保護するために期限が設けられている特許等とは異なり、長期の使用が権利所有者の信用につながることから、10年ごとに更新できるのも特徴です。
商標登録の意義
商標登録をすることで、権利所有者やその許諾を得た商品・サービスを紛れもない本物と証明したり他の類似したものと識別しやすくなり、権利所有者の権利や利益の保護、また商品やサービスへの信用につながります。また、商標の知名度や信用に便乗して権利所有者やその許諾を得ている本物と誤認させる偽物を取り締まることができます。
そして権利所有者の保護と同等かそれ以上に、粗悪な偽物の流通を防ぐことで消費者の利益を保護できるというのも重要な意義があります。
一般の個人が商標登録をする場合、最も想定されるのは個人で作成したキャラクターの名称やイラストに関するものです。
現在はLINEクリエイターズスタンプやSNS等で元は個人が作成したものから絶大な人気を得てグッズ展開しているキャラクターは珍しくないですが、そういうものはたいてい作者の本名と思われる名義の商標登録が…この情報は悪用しないでください。
実際にはグッズ化に際して契約した企業の名義での商標登録も多いようです。
ここから考えると、「商標の知名度や信用に便乗して権利所有者やその許諾を得ている本物と誤認させる」目的以外で、例えばYouTube動画やブログで商標登録されている商品名・ブランド名・キャラクター名に言及して購入品紹介をするということなどについては、商標権侵害となる可能性は極めて低いと考えられます。
異議申立てや無効審判
さて、問題の商標をJ-PlatPatで検索してみましょう。
関連リンク:登録6518338
J-PlatPatのステータスでは「異議申立のための公告」期間となっていますが、これは仕様上は商標広報から3ヶ月程度表示されるらしく、実際には異議申立てが可能な2ヶ月を既に過ぎています。
そのため、不当な疑いが強いとしても可能なことは無効審判なのですが、これには「利害関係人」という条件がついています。「利害関係人」というのは、商標登録されているものを使用して侵害警告や差止請求を受け取った人などがあてはまります。無効審判を起こしければわざとそれを使用して侵害警告や差止請求を受け取る…これ以上書くと良くないことを唆しそうなのでやめます。決してそのような行為を推奨する意図はありません。
また、商標登録されている文字商標を使ったからといって使用した人が出願人の知名度や信用に便乗しようとしていることや、視聴者が「出願人の許諾を受けている」と誤認することは考えにくいので、文字商標を使うだけで許諾やライセンス料が必要だとか、無断で文字商標を使ったからといって商標権侵害になる可能性は低いです。
なんというか、商標としてあまりにも「需要者の利益を保護」という目的にかなってないというのが個人的な感想です。
他にも気になることはいくつかありますが本筋からは外れるので箇条書きにします。
・出願した本人と出願の名義人が異なること
商標の場合は必ずしもアウトとは言い難い。
・出願人が考案したわけではないこと
これも商標の場合は必ずしもアウトとは言い難いが、それを独占しようというのはおかしな話ではある。
・出願人のYouTubeチャンネルはUUUM CREAS所属であること
YouTubeチャンネルを持つ人なら誰でも加入できてチャンネル運営についてサポートを受けられるコミュニティのようなもの。収益化しているチャンネルについてはいわゆるMCNとしての機能もあるが、審査はあるとはいえほぼ誰でも入れることには変わりない。
・二次創作であること
文字商標と二次創作の原作に直接は関係ないので(そりゃネットミームとして関係あるのは明らかかもしれないけど誰が見ても明らかに関係あるとは言い難い)、原作者が無効審判を申し立てできる利害関係人といえるかどうかも筆者には断言できない。
・そして当然のこと
出願人を誹謗中傷してはいけない。しかしこの手の行動を起こしてしまう人物は正当な批判すら誹謗中傷と捉えないかという不安はある。