今回は、個人事業主・一人法人の両方をひっくるめて「ひとり事業」としました。筆者は政党を問わず政治家という職業そのものに不信感を持っているタイプですが、少なくとも現在の政権が進めているペーパーレス化・オンライン化は、起業へのハードルが下がるだけではなく手続のほとんどが非対面ですむため、感染症対策にもなる点も含めて評価できると思います。
個人事業主・一人法人それぞれ非対面で可能な手続きをまとめました。本日、筆者個人の動画でも言及しましたが、むやみに外注せず自分でできることを自分でやってしまうことはコストを抑えるために大切なスキルの一つです。金もコネもノウハウもない「三ない」が揃った状態からだと、とにかく一つ一つ着実に進めるしかありません。
必要な準備
これらのオンライン手続きに、次のものは必須です。
・マイナンバーカード(署名用電子証明書が記録されたもの)
電子証明書のパスワードの確認、また署名用電子証明書が有効であるかの確認も行っておきましょう。マイナンバーカードを作成してから改姓・転居などがあった場合、電子証明書が無効になっています。私はそれに気づかず、思い立った日に手続きをすることができませんでした。目に見えないものは気づかなかったり後回しになってしまいがちです。改姓や転居の際には多数の手続きを並行して行うことになるので、電子証明書の変更もやっておけば良かったと思いました。
・ICカードリーダー
SONY「Pasori」などが代表的です。マイナポイント事業でも品薄になりましたが、この時期、確定申告をはじめとしたオンライン申請のために品薄になるかもしれません。3000円程度と、そんなに高価なものではないのでこの際持っておきましょう。高価でないとはいえ、一家に一台あれば事足ります。筆者は夫婦で共有しています。
便利なリンク集
重要な公共サービス
e-Tax(個人/個人事業主/法人)
登記・供託オンライン申請システム(法人)
法人登記・添付書類テンプレート(法人)
マイナポータル(個人/個人事業主/法人) 法人設立ワンストップサービスあり
登記情報提供サービス(個人/個人事業主/法人) 不動産登記・商号登記・法人登記など様々な登記情報を有料でダウンロード可能
重要な民間サービス
Adobe Acrobat Pro DC(法人) 個人・個人事業主が電子署名を導入する場合にも必要
開業freee(個人事業主)
マネーフォワードクラウド会社設立(法人)
個人事業主
比較的ハードルが低く、税務署に「開業届」を出すのみです。また、税金の控除が大きくなることから「所得税の青色申告承認申請書」も併せて提出することが一般的です。
個人事業の開業届を簡単に作成できるサービスには開業freeeがあります。項目に沿って答えるだけで簡単に作成できます。作成した書類は管轄の税務署への提出が一般的ですが、この時期に窓口に持って行くのは憚られます。非対面で提出する場合、「控えの返送用封筒を同封して郵送」という方法があります。また、有効な署名用電子証明書が記録されたマイナンバーカード・ICカードリーダーを持っていればオンライン確定申告で知られるe-Taxのソフトを用いてオンライン申請することも可能です。

法人
筆者は登記・供託オンライン申請システムを使用しました。申請用総合ソフトのインストールはいつでも可能ですが、申請者情報登録・申請などの機能が使用できるのは平日 午前8時30分から午後9時までとなっています。
株式会社・合同会社のどちらかを問わず、電子定款を作成するだけで紙の定款に必要な印紙税4万円を削減することができます。ただし、定款をはじめとした必要書類に電子署名を付与するために、有効な署名用電子証明書が記録されたマイナンバーカード・ICカードリーダー・署名用プラグインを用いるためのAdobe Acrobat Pro DC(無料版のAdobe Acrobat Readerには電子署名機能がありません。Proでは7日間の無料体験が可能)が必要となります。7日間の無料体験期間で済ませたいなら、誤りがないよう確実に作成してPDFに変換してからのインストールでも遅くないと思います。
画面の指示に従い登記事項を記入します。添付書類はWordなどで作成したものをPDFに変換し、電子署名を付与します。添付書類は法務局のサイトにあるテンプレートを参考に作成できます。印鑑をあちこちに捺印したり印紙をあちこちに貼ったりしなくていいだけで、形式はほぼ同じです。印鑑の代わりに、完成した書類をPDFに変換して電子署名を付与します。電子署名を付与した添付書類を登記事項に添付し、法務局へ送付します。
また、クラウド会計ソフトでは、法人契約を条件に会社設立に伴う書類や電子定款の作成手数料を無料としているサービスもあります。マネーフォワードクラウド会社設立などのサービスを使うことでも、ほとんどペーパーレスでの手続きが可能です。オンライン登記についてしれっと書いていますが、すべて自分でやるにはそれなりに手間がかかりました。なんでも自分でやってしまうことは確かにコスパがいいのですが、本来やりたいことややるべきことが疎かになっては本末転倒なので、適宜アウトソーシングすることも必要だと思います。

ただし、法人実印と代表者の実印の届出は必要です。これは別途取得して法務局に郵送します。法人実印は1万円以内、最速で注文の翌々日には入手可能です。筆者はハンコヤドットコムで発注し、印鑑届書はこちらからダウンロードして印刷し、記入・捺印しました。個人の印鑑証明はマイナンバーカードを使用してコンビニで取得しました。これさえなければ完全ペーパーレスだったのですが、今後に期待するしかありません。
受理された後の都道府県・市町村・税務署への届出は、法人番号が発行されてすぐマイナポータルの法人設立ワンストップサービスで秒殺しました…というのは過言ですが、本来とても面倒な手続きがマイナンバーカードのおかげですぐに終わりました。。必要となる法人登記簿謄本や定款の写しもPDFファイルで用意します。法人登記簿謄本のPDFファイルは、登記情報提供サービスの一時利用アカウントを取得し、クレジットカードで手数料を支払って取得しました。
ここまで頑張ったのですが、今回の記事はもうすぐ無意味なものになる可能性があります。マイナポータルの法人設立ワンストップサービスは、2021年2月を目処に法人登記そのものにも対応予定とされています。名前を言ってはいけないアノ大臣(あまりにインターネットに強いことからこの扱いになっています)が登録免許税の軽減やペーパーレス手続、印鑑不要の手続きに意欲的であり、一見不要不急に見えるかもしれませんが、様々な非対面手続が可能になることは感染症対策にもつながります。より簡単に、印鑑の提出もなくマイナンバーカードだけで法人設立が可能になる時代はすぐそこまで来ているかもしれません。