行政書士試験の学習範囲に関して個人的に思うところが多いのでこの企画に託けて思うところを書いていたが今日はちゃんと試験対策っぽいことをしよう。(でも結局広い意味で思うところを書いている)
行政罰として、現在規定され実際に科されることのある罰則としては「行政刑罰」(条例違反等に対する刑罰で、例えばどの地方公共団体でもありふれているものなら青少年保護育成条例などへの違反に懲役・禁錮・罰金・拘留・科料を科すことができる)、「秩序罰」(軽微な行政上の義務違反、例えば実際に科されることは少ないが戸籍や住民票の届出を怠ると過料を科すことができる)の2つがありますが、それ以外に「執行罰」なるものがあります。
これが行政書士試験では一応は出題されると想定したほうがいいのですが、法律初心者からすると単に行政刑罰や秩序罰、あるいは罰則ではないですが代執行などの強制執行と混同させるような嫌がらせのような規定です。現在、「執行罰」が規定されているのは以下の法律のみです(ここから着想して本日のサムネイルを設定しました)。
私人ニ於テ此ノ法律若ハ此ノ法律ニ基キテ発スル命令ニ依ル義務ヲ怠ルトキハ国土交通大臣若ハ都道府県知事ハ一定ノ期限ヲ示シ若シ期限内ニ履行セサルトキ若ハ之ヲ履行スルモ不充分ナルトキハ五百円以内ニ於テ指定シタル過料ニ処スルコトヲ予告シテ其ノ履行ヲ命スルコトヲ得
砂防法第36条
漢字とカタカナ、古風な文体、「500円以内の過料」という義務者に心理的な圧迫を加えるという執行罰の講学上の目的には到底そぐわない金額から分かる通り、これは明治に制定されてなぜか改正も削除もされていない法律です。法律初心者としてはなんでそんなことで紛らわしい用語が一つ増えるのかと腹が立つような事例です。
しかし、同じように明治時代に制定されて法律のみが残り長年にわたって形骸化していたにもかかわらず近年少数ながら適用されている例として、行政法より刑法の分野に属するので学習自体には無関係なものですが、俗にいう「決闘罪」があります。暴行罪や傷害罪で取り締まるのが困難な俗にいう「タイマン」を取り締まる例があるようです。
単純に同列には扱えませんが、地方公共団体によるハザードマップの作成などで一般に防災意識が高くなっている現代において、砂防法にももしかしたら執行罰としての明確な効力が生じる改正が起こる可能性がゼロとはいえないかもしれません。