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32日後に行政書士試験を受ける人 「被選挙権の理想と現実」


定期更新で法律について体系的に学ぶのは昨日までとして、今日からは比較的身近なトピックや判例から色々なことを学び、一般知識の対策にもしておこうと思います。

ということで、近々控えている衆議院選挙に関すること、どちらかと言えば被選挙権(選挙権ではありません)に関することを書こうと思います。
選挙権に関してはいわゆる「一票の格差」関連の判例が多いのですが、これはあまりにも論じている人が多いところなのでわざわざ筆者が取り上げることでもないでしょう。

次の衆議院選挙については、2021/10/21に衆議院の任期満了が控えていたため、特に菅前首相の自民党総裁選不出馬の意向表明から任期満了総選挙も噂されていましたが、岸田首相の速やかに民意を問うという意向により2021/10/14の解散となりました。日本国憲法のもとで、任期満了総選挙は2021年現在、1976年に1回行われたのみということになります。関連する出題は数年前にありました。

被選挙権

国会議員、そしてついでに地方公共団体の都道府県知事・市町村長・地方議員の被選挙権の要件を見てみましょう。

両議員の議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。但し、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によつて差別してはならない。

日本国憲法第44条

日本国民は、左の各号の区分に従い、それぞれ当該議員又は長の被選挙権を有する。
一 衆議院議員については年齢満二十五年以上の者
二 参議院議員については年齢満三十年以上の者
三 都道府県の議会の議員についてはその選挙権を有する者で年齢満二十五年以上の者
四 都道府県知事については年齢満三十年以上の者
五 市町村の議会の議員についてはその選挙権を有する者で年齢満二十五年以上の者
六 市町村長については年齢満二十五年以上の者

公職選挙法第10条

この次に「選挙権及び被選挙権を有しない者」の定めもありますが、禁錮以上の刑に処せられたり公職選挙法違反をしたりせず日常生活を送っている人にはあまり関係ないことがらです。しいて当サイトを閲覧するような方に関係するとしたらその条項とは関係なく、公務員の立候補制限あたりでしょうか。

選挙の公示は2021/10/19であり、この日の午前8時30分から午後5時までに立候補の届出と候補者となる者ができない者でない旨の宣誓書、その他様々な必要書類を選挙管理委員会に提出すれば誰でも立候補できます。実際には不備のないよう、公示日より前に事前審査に出すことが多いようです。選挙権と同じく、日本国籍・年齢・(地方公共団体の議員については)住所の要件さえ満たせば、被選挙権も誰にでもあります。なんといっても憲法で「差別してはならない」とまで規定されていますからね。これを読んでいる皆さんも、25歳未満の方や公務員の方を除けば今からでも立候補できますよ。
関連リンク:総務省|立候補

というのは例によって法律の上での理想論である

ところで選挙には「供託金」という制度があります。
これは「当選を争う意思のない人が売名などの理由で無責任に立候補することを防ぐための制度」とされ、衆議院小選挙区では300万円、衆議院比例代表では(これは政党に属していない被選挙権を有する人にはあまり関係ありませんが)600万円とされています。300万円…。普通に暮らしていて頑張れば貯金できそうな額ですが、気軽にポンと供託できる金額ではありませんね…。
ちなみに、都道府県知事の候補者の供託金は一律で300万円のため、選挙権を持つ人が最も多く、全国からの注目度も高い東京都知事選挙では今でも「当選を争う意思のない人が売名などの理由で無責任に立候補」という例が少なくない気がしますが、仮にそうだとしても気軽にポンと300万円を供託できる時点で、当選を争う意思がないとしても何かしらの覚悟なり、供託金を没収されてもそれ以上の利益を生み出す手立てなりある方々なのだろうと思います。

供託金の制度は「財産又は収入」で被選挙権を制限しているとして違憲なのではないかと考えている人は決して少なくはないようですが、選挙で当選した議員には没収されず返還されることから、当選した議員の所属政党には関係なく供託金の制度の是非に関して論じられるどころか、日本国憲法のもとでは供託金の金額はどんどん引き上げられていきました。2020年には、それまで供託金不要であった町村議会議員の候補者にも15万円の供託金が必要となりました。

筆者は他国と比べて日本が遅れているだの独特の制度に固執しているだの言うことはあまり好きではないのですが、高額な供託金制度に関しては他国と比べて高すぎるとかそれ以前の問題として被選挙権を不当に侵害していると思っています。だからといって撤廃したら全国で東京都知事選挙のようになってしまうのかもしれませんが(これ以上適切なたとえが思い浮かばずすみません)、それをどう判断するかも有権者の持つ権利の一つです。有権者は選挙権を持つだけではなく、年齢による制限や公務員の立候補制限を除けば被選挙権も平等に持っていることが理想である、しかしそれを実際に行使するのが難しい現実がある、という意識を持っておきたいところです。

今まで供託金制度については地方裁判所や高等裁判所で争われたことはあるものの、明確に違憲とされたことや最高裁判所での判例がないため、「被選挙権の制限」については一般の有権者や筆者を含む法律初心者からそれほど重視されてこなかったところがあります。そういうところを掘り下げるのが筆者の趣味ですが、勉強としては効率が悪いかもしれません。

扱いたいことは色々ありますが、時期を考えると「一般人がインターネット上でやりかねない公職選挙法違反」あたりを扱うのがちょうどいいかなどと考えています。

Posted in 資格試験対策