一般の人々にとっても身近かつ、筆者にとって最も思うところの多い分野ですが、思うところは憲法の一連の記事と同様小さい字で書きます。
今回も原則として章立てに従い、「民法:婚姻」「民法:親子」「民法:後見・補佐・補助」の3本でお送りします。「親権」「扶養」については必要に応じて触れます。
第725条〜第730条の総則において、民法に定める親族は、「六親等内の血族(例としては本人から見て、”はとこ”まで)」「配偶者」「三親等内の姻族(例としては配偶者から見て、”おじ・おば”まで)」があてはまります。また、親族関係が発生する場合と終了する場合について、「養子縁組による血族関係の発生」「離婚による姻族関係の終了」「養子離縁による血族関係の終了」「夫婦の一方が死亡し、姻族関係終了届を出した場合の姻族関係の終了(俗に言う「死後離婚」)」があてはまります。なお、姻族関係終了届は、制度上は生存している側の意思表示のみで足りることになっています。
とにかく民法の親族に関する規定と、それに関連する相続に関する規定は「血縁関係(養子縁組によるこれに準じた関係含む)」と「配偶者との関係」を中心に重視したものとなっていて、「男女の区別」「生まれた順番」「嫁・婿と姻族の関係(相続等のために嫁・婿と養子縁組している場合を除く)」についてはまったく重視していないと言っても過言ではありません。
民法上はそういった不平等は容認しないのに日本の象徴には伝統や血統を理由にそれを押し付けるんですか?いつかその代償が訪れるというか、既に訪れていると言えなくもないと思います。憲法や民法の考え方や違憲審査の基本として「本人が生まれつき選択しようのないことがらについて不平等が発生してはならない」というのがあるようなので、生まれつき選択しようのないことがらに不満がある同士なら…でも幸せならOKです(強引に終了)
民法:婚姻
第731条〜第771条
既に改正され来年施行予定のものとして、18歳成人に伴い、性別に関係なく婚姻適齢が18歳以上となります。これに伴い、法的に未成年が結婚することはなくなったため、未成年者の結婚についての父母の同意、婚姻による成年擬制(未成年者が婚姻した場合成年に達したものとみなす)の規定は削除されることになりました。
当事者間に婚姻の意思がない場合や婚姻の届出がない場合は婚姻は無効となります。
婚姻が禁止され、そのことがあとで発覚した場合に取り消すことができるものは次のような場合があります。
・配偶者のある者の婚姻(いわゆる重婚)
・女の再婚禁止期間(100日)。ただし、女が離婚の時点で妊娠していない場合や離婚後に出産した場合といった、「父が不明な子」が生じる余地がない場合には、再婚禁止期間は適用されない。例えば、現代なら「ママレード・ボーイ」の主人公たちの親はすぐに再婚できる。なお、婚姻に関して性別が明記されている規定はこれだけである。
・直系血族又は三親等以内の傍系血族の間。いとこは四親等なのでいとことの結婚は可。ちなみに、今まで「みゆき」など数々のフィクションの中でとてもデリケートに扱われてきた、実子と養子のきょうだい(傍系血族)の結婚は禁止されていない。
・直系姻族(たとえば俗にいう義父と嫁、義母と婿)の間。離婚・姻族関係終了後も不可。
・養親子等(直系血族に相当する範囲)の間。養子離縁後も不可。
おわかりいただけただろうか…
民法上、男性同士や女性同士の結婚は禁止されていません。女の再婚期間以外、特に婚姻に関して男女を限定した規定はなく、憲法でも「両性の合意」とのみ定められています。両性が男性同士でも、女性同士でも、それらにあてはまらなくても、極端に言えば女性が夫で男性が妻でも構わないことになります。あれ?民法改正なんていらないのでは?戸籍から性別を消したら早いのでは?同性婚が可能になると、同性愛者だけではなく、例えば離婚か死別かは問わずシングルマザーやシングルファーザーが同性の信頼できる親友関係のパートナーと共同で子供を育てたいという場合など、他にも救われる人が増えてくると思います。じゃあ戸籍法のせいかー!!!と思ったら戸籍法にも性別の記載が必須とはどこにも書いてありません。もう何もわからなくなってきましたが、こう言う法の抜け穴探しは筆者の癖です。
夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。
民法750条
色々な人が思うところの多い条文が出てきました。現在の判例上は「夫又は妻の氏」とある通り、民法の上では夫婦が平等で一切女性を不利に扱うものではなく、また国際結婚は相手が帰化して日本の戸籍に入る場合を除いてすべてを日本人同士の結婚と平等に扱うことができないとされています。民法の上では平等だからこそ、法律で選択的夫婦別姓にするよりも、社会の実態が法律通り平等にならないと無意味であるように思います。
もしかしたら制定された頃は妻の氏を選択する夫婦がもっと多くなると想定されていたかもしれませんが、男性の養子縁組や婿入りが比較的頻繁に行われていた戦後間もない頃よりむしろ少なくなっている可能性もあります。
筆者は何度もでも言いますが現状の夫婦同姓(夫又は妻の氏から選ぶ)のも選択的夫婦別姓にも反対です。夫婦別姓にしても子の姓を夫か妻のどちらかにするという不平等が発生します。過去の日本を含む極東の各国では、どちらかというと「嫁は家の一員ではない」という女性蔑視的な思想から夫婦別姓をとっている国が多いので、どうも男女平等やジェンダー平等と選択的夫婦別姓がなじまない気がしています。どうせマイナンバーがあるんだから、戸籍上の氏名なんて何度変わってもいいじゃない。本籍を(未だに古い考えの家庭では夫の従前本籍にする場合も少なくないようですが)自由記述できるように、婚姻後の氏だって自由記述、夫婦で決められればいいと思っています。これは古くは明治時代、また法的には夫婦別姓が義務だったものの事実上は夫婦同姓が増えてきた頃に福沢諭吉先生も提唱しており、「夫婦創姓」と言われることがあります。国際結婚で外国人側が帰化する場合はこれが可能で、石垣島で飲食店を経営する「辺銀(ぺんぎん)」夫妻といった例があります。
また、同じ章の中で離婚に関することも定められています。
協議による場合(離婚届を提出するのみの場合)でも裁判による場合でも、子の監護や離婚後の氏に関する定めは同じです。ただ、財産分与や慰謝料が非課税であることを悪用した脱税まがいの離婚も…ゲフン。
また、離婚のとき、婚姻によって氏を改めた側は「もとの戸籍にもどる」か「新しい戸籍をつくる」か、また原則としては婚姻前の氏にもどるところ、「離婚の際に称していた氏を称する届」によって、配偶者の家族の意向と関係なく婚姻中の氏を続けて称する、いわゆる婚氏続称をすることができます。生活上の便宜や、特に子供がいる場合の子供への影響などを考えてこれを選択する場合も少なくないようです。
つまり、自分がなりたい苗字の人と一瞬だけ結婚してすぐ離婚したら苗字を変えられるんだな(いつもの法の抜け穴探し)
子供がいて氏を改めた側の戸籍に入籍(※1)させる場合は、「新しい戸籍をつくる」を選択しないと面倒なことになります。
(※1)「入籍」という言葉は厄介なもので、民法や戸籍法の上では一般に使われる婚姻よりも、離婚に縁が深いものです。「既にある戸籍に別の人物を入れる」と言う意味合いなので、例えば「離婚して妻が単独の戸籍をつくり、そこに子の戸籍を移す」場合に「入籍届」を提出します。
筆者はこれを都合よく拡大解釈して、「新しい戸籍に婚姻する2人が入る」として広い意味で「入籍」という言葉を使っていると解釈していますが、未だに「夫の家の戸籍に妻が入る(婿の場合は妻の家の戸籍に夫が入る)と誤解している人が多いので困りものです。婚姻とは戦後の民法が成立した70年以上も前から、少なくとも制度上は「夫婦両方が互いの生まれ育った家から独立して新しい家庭をつくる」ということなので、どちらかの家に入ると言う性質のものではありません。それこそ夫婦どちらかの旧姓ではなく夫婦とも新しい氏にできればそのへんの意識がガラッと変わりそうなのですが、世の中で賛成反対すら議論されていません。悲しい!
とりあえず婚姻届を入籍届と書き間違えるのは縁起があまり良くないですが、例えば既に分籍している人(実際には再婚の場合が多い)を筆頭者として婚姻する場合は「婚姻」と「入籍」が同時に起こることになります。難しい!