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44日後に行政書士試験を受ける人 「民法:物権」


物(不動産及び動産)に対する様々な権利です。

諸事情により、「民法:時効」を昨日の記事に追記しました。便宜上記事のタイトルを「民法:物権」としていますが、さらに細分化して「民法:占有権」「民法:所有権」「民法:抵当権」の主要な3つの権利を扱います。他に、これらに関わる権利としてそれぞれの中で「地上権」「永小作権」「地役権」「留置権」「質権」を扱います。なお、原則として有体物に及ぶ権利ですが、財産に対する権利として知的財産のような無形物にも準用される規定もあります。
第175条〜第179条は総則であり、物権(占有権や所有権など)は当事者の意思表示のみによって効力を生ずること、不動産については登記・動産については引渡しが第三者への対抗要件(その人の物権を第三者に主張するための要件)であること、混同による物権の消滅の例外として占有権があることが定められています。

民法:占有権

第180条〜第205条
「占有者が占有物について行使する権利は、適法に有するものと推定する(※1)」と定められています。
(※1)法律に出てくる「推定する」という用語は、それに反する証拠(この場合は占有者の権利が違法であるという証拠)によって覆る可能性があることを意味します。それに反する証拠によっても覆らない、極端に言えば白いものでも黒とする場合は「みなす」という表現になります。

取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。

民法第192条

しかし、実際には盗品や遺失物をそれとは知らず(法的には「善意」で)占有することがあるかもしれません。この場合、元の持ち主が2年間は返還を請求できます。しかし、新たな持ち主が買い取った場合には、元の持ち主は新たな持ち主に対価を支払う必要があります。

そして、ある例外があります。これはいわゆる捨て犬・捨て猫など、他人の飼育していた動物を拾った場合の規定です。以前、浜松で捨てハリネズミのニュースがありましたが、元の飼い主は現れず新たな飼い主の手に渡ったと風の噂に聞きました(事実かは不明です)。このように新しい飼い主が現れた場合に占有権が移転する期間を定めています。1ヶ月で正式に新たな飼い主が占有権を取得することとなります。

家畜以外の動物で他人が飼育していたものを占有する者は、その占有の開始の時に善意であり、かつ、その動物が飼主の占有を離れた時から一箇月以内に飼主から回復の請求を受けなかったときは、その動物について行使する権利を取得する。

民法第195条

その他、占有に関する訴えや占有権の消滅に関する定めがあります。

民法:所有権

第206条〜第264条
所有権に関しては、土地の利用など不動産に関することを多く定めているようです。なぜか筆者はデスノートを思い出さずにはいられませんが、原則として動産の所有権に関しては当事者の意思表示で足りるとのことなので、デスノートと同じですね(???)。

1 隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。
2 隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。

民法第233条

法学部出身の方がよく話題にしているイメージですが、時々出題されるようです。

建物を築造するには、境界線から五十センチメートル以上の距離を保たなければならない。

民法第244条

民法は「一般法」のため、これはおそらく民法制定当時の日本古来の木造住宅を想定し、火災が広がることを懸念して距離をとるように定めた法律だと考えられます。現代では「特別法」である建築基準法によって、防火地域や準防火地域の耐火建築物についてはこの規定は適用されないこととされているため、都市部を中心に隣の家とほとんど距離のないような住宅も珍しくありませんが、これは法律違反ではありません。

また、普通に生活していて関わりがありそうなのが次の「遺失物の拾得」です。飼育されている動物については先の占有権の規定が優先されます。先日、1億円超の残高のある通帳・キャッシュカード(暗証番号のメモ付き)を良心に従い警察に届け出た人がTwitterで話題でしたが、届け出るまで生きた心地がせず、報労金や所有権については一切辞退されたとのことです。

遺失物は、遺失物法の定めるところに従い公告をした後三箇月以内にその所有者が判明しないときは、これを拾得した者がその所有権を取得する。

第240条

その他、重要なものは次の「民法:抵当権」で触れますが、他に民法に定められる物権として
地上権(第265条〜第269条)
永小作権(第270条〜第279条)
地役権(第280条〜第294条)
留置権(第295条〜第302条)
先取得権(第303条〜第341条)
質権(第342条〜第368条)
といったものもあります。

民法:抵当権

第369条〜第398条
現代で一般に抵当権が発生するのは、住宅ローンの担保としての不動産についてということが多いと考えられます。

抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。

民法第369条

抵当権を複数設定することができることや、返済が不可能になったときには民法に従って競売にかけられ、第三者が取得した場合には元の抵当権を消滅させなければならないなどという規定があります。また、抵当権は債権の消滅まで(俗に言えばローンの返済完了まで)消滅しません。また、行政書士試験において頻出であるのが法定地上権です。

土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす。(以下略)

民法第388条

つまり抵当権設定当時には土地とその上の建物の所有者が同一であり、競売により土地と建物の所有者が別となったときに建物に地上権(他人の土地を使用する権利)が設定されるということです。また、一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保する根抵当権についても頻出です。あーそーゆーことね完全に理解した(←わかってない)。

その他、抵当権と同様に債権に関して俗にいう担保を設定する権利に「留置権」「先取得権」「質権」があります。
留置権:債権者が他人の物の占有にあたってその物を留置する権利。物の留置について善良な管理者の注意(善管注意義務)が必要。
先取得権:債権者が優先的に債務者に弁済を請求できる権利。
質権:債権の担保として債務者等の物を占有する権利。なお、動産や不動産のみではなく、財産権(知的財産権含む)にも質権が設定できる。知財検定2級で問われて焦った。

今日の範囲は結構難しいので投げやりな箇所もありますが、「民法:債権」「民法:契約」あたりは身近な例が出しやすいので、そのあたりで適宜知識を固めていきたいと思います。

Posted in 資格(試験対策・行政書士登録準備)