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45日後に行政書士試験を受ける人 「民法:総論 等」


【お知らせ】FP(2級学科合格済み/2級実技結果待ち)・行政書士の試験対策については「資格試験対策」カテゴリーを新設しました。知財検定についてはかかわりが深いので今まで通り「知的財産権全般」のカテゴリーそのままとしています。

本日は「民法:総論」「民法:人」「民法:法律行為」「民法:時効」の4つでお送りします。

民法:総論

私権(自然人・法人の持つ権利)を中心にそれに関わる権利義務について主に定めたものになります。
総則および、主に財産に関すること(物権・債権)、主に親族に関すること(親族・相続)の全1050条(!)からなる、比較的身近なことに関わりの多い法律です。財産の売買や貸借に関わることも定められています。例えば個人間取引サービスについては、一般法である民法と特別法である特定商取引法などに反しないような規約を設けています。婚姻・離婚・養子縁組・相続など、家族関係にかかわることも民法に定められています。
全1050条と途方もないボリュームですが、ポイントを押さえれば知っておいて損はないことばかりです。

第1条・第2条の通則では「私権は、公共の福祉に適合しなければならない。」「個人の尊厳と両性の本質的平等を旨として解釈しなければならない。」などと憲法にも出てきた表現で民法全体に関わることが定められています。法律では「両性」という表現であるのは、偶然とは思うのですが何か救われた気持ちになります。初心者の素人考えですが、法律はそれ自体が物事に白黒つけられる性質のものではなく、あくまで基準を示した上で解釈の分かれるグレーゾーンの余地をかなり残していると感じます。

民法:人

第3条〜第89条
ウソのような本当の話ですが、民法第1編第2章は本当に「人」という名がついています。ちなみに第3章は「法人」、第4章は「物」です。この3つを合わせて第3章〜第89条まであるのですが、会社法の制定により「法人」の第38条〜第84条は削除されました。
権利能力・意思能力・行為能力の主体となる人について定められています。「法人」も原則として「人」と同じく権利や義務の主体となるとされています。「物」は財産権が及ぶ対象について定めています。「果実」が一般に使われるのとかなり意味が違いますがあまり掘り下げるところでもなさそうです。動物が法的に「物」であるのは、納得がいかないのもわかりますが致し方ないことなのです。
権利能力は原則として生まれたときから誰もが持つとされ、意思能力は個別に判断されるという解釈が一般的なようです。
行為能力について、改正され施行を控えている有名な条文としては、「年齢十八歳をもって、成年とする。」俗にいう「18歳成人」が知られています。未成年者は行為能力が制限されているため法定代理人(多くの場合は親権者)による法律行為(例えば契約)の取り消しが可能ですが、18歳成人によって18歳から行為能力を持つこととなるため、18歳・19歳の若者が消費者トラブルに巻き込まれたときの契約の取り消しなどが困難になると懸念されています。

また、未成年以外でも精神上の障害(消費者トラブルで問題となりやすいのは認知症などにより行為能力が十分でない人が売買契約などをおこなった場合)により行為能力を制限されることがあります。未成年の場合の親権者に代わり、
・行為能力を欠く場合:後見人(日常生活に関する法律行為以外の取り消しが可能)
・行為能力が著しく不十分な場合:保佐人(第13条に定められる行為について同意なくおこなった場合の取り消しが可能)
・行為能力が不十分な場合:補助人(第13条に定められる行為の一部に関して同意なくおこなった場合の取り消しが可能
をつけることとなります。

その他、「住所」「不在者の財産の管理及び失踪の宣告」「同時死亡の推定」について定められています。

民法:法律行為

第90条〜第143条
上で挙げてきた「法律行為」とはなんなのでしょうか。まず、通則として公序良俗に反する法律行為の無効、また反しない範囲で法令で定めるものと異なる意思表示や慣習には従うものとされています。

「意思表示」については、次のような場合に契約の無効や取消しが可能と定めています。これは知財検定2級の範囲でもあります。
まず「無効」と「取消し」の違いですが、
無効:もともと効力がなかったものとして扱う。
取消し:取り消されるまで有効であった行為が取消しによって最初に遡って効力を失う。
という違いがあります。
無効や取消しができる場合として、次のような定めがあります。
心裡留保:意思表示をした人の真意ではない(虚偽の)場合でも有効。ただし、相手方がそれを知るか、知ることができたときは無効。
虚偽表示:意思表示をした人が相手方と通じて虚偽の意思表示をした場合は無効。無効は善意の第三者(※1)に対抗できない
錯誤:意思表示をした人の錯誤(勘違い)による場合は取り消すことができる。ただし、錯誤が重大な過失による場合は取消し不可。また、取消しは善意無過失の第三者(※1)に対抗できない。
詐欺または強迫詐欺はまた強迫による意思表示は取り消すことができる。取消しは善意無過失の第三者に対抗できない。
その他、条文とは前後しますが、行為能力が制限されている人(未成年・被後見人・被保佐人・被補助人)の場合の取り消しも定められています。

(※1)法律では、ある事実を知らないことを「善意」、知っていることを「悪意」と表現することが多いようです。虚偽表示の場合は虚偽だと知らない第三者(過失の有無は問わない)が関係した場合は無効とできない、錯誤・詐欺または強迫による意思表示の場合は錯誤・詐欺または強迫について知らない無過失の第三者に取消しは及ばないということです。これは無効・取消しによって第三者に不利益が生じるのを防ぐためですが、具体的な物権や債権を扱うところで再び具体的な事例を学びたいと思います。

その他、「意思表示の効力発生時期等」「公示による意思表示」「意思表示の受領能力」について定められています。

また、実際には夫婦やその成人した子の家族間、あるいは手続きを専門家に依頼する場合など、行為能力がある人同士でも意思表示について代理を依頼することがあります。代理人が本人のためにした意思表示は本人がした場合と同様の効力があります。また、代理人がさらにその代理人(復代理人)を選んだ場合も同様です。

よく出てくる用語としては以下のものがあります。
表見代理:本人が他人に代理権を与えた旨を表示した場合(委任状を渡した場合など)、原則として本人が責任を負う。
無権代理:代理権を持たない者が勝手に代理人として契約をすること。迷惑な話である。迷惑な話なので、代理権を持たない場合や本人の追認がない場合は相手方に対して無権代理をした者が原則として契約の履行や損害賠償の責任を負う。
本人が相手方に対して追認(改めて本人が意思表示をして契約の時に遡って有効とすること)をしなければ、本人に対しては無効である。
相手方は本人に対し相当の期間を定めて追認をするかどうかを催告することや、取り消すことができる。
催告に対して本人が期間内に回答しない場合、追認を拒絶したものとみなす。(※2)

(※2)法律用語において「みなす」は一般的にイメージするよりかなり強い意味を持ち、初学者向けの文献ではよく「白いものでも黒と言われればその胸の中にすべてを飲み込んで承服せざるを得ない」と、ここまでは書いていないですがそのくらい強いです。この場合、本人が追認するつもりがあったとしても、期限内に回答しなければ、本人の意思とは異なりますが拒絶したということになります。白いものでも黒と言われたところに白だという証拠を突きつけて覆すことができる場合には「推定する」という表現が使われます。

民法:時効

第144条〜第174条
「時効」というと刑法に関わるイメージですが、簡単にいうと他人の物の所有権などの財産権を時効により取得する「取得時効」、債権(俗に借金を取り立てる権利など)やその他の財産権が消滅する「消滅時効」の2つがあります。

取得時効:20年間(善意無過失の場合は10年間)

二十年間、所有の意思を持って、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。

民法第162条

この条文、民法の中でもかなり好きなんですけどわかる人いませんか?

消滅時効:債権の場合は権利行使できることを知った時から5年間、権利行使できる時から10年間、その他の財産権は20年間。ただし、人身傷害による損害賠償請求権は原則として権利行使できる時から20年間。
取得時効と裏返しで考えると、他人に自分の物を平穏かつ公然と占有されていたことに本人が気づいていなかった場合、本人がその物の所有権を20年で失うと解釈できる。
具体的な例は「物権」「債権」のところで考えるのがよさそう。

その他「条件及び期限」として条件付き法律行為、「期間の計算」で初日不算入の原則も定められています。このあたりも重要ではありますが。あまり一般的にピンとこないところなのでとりあえず今日はこのあたりまでとします。明日は「民法:物権」を予定しています。

Posted in 資格(試験対策・行政書士登録準備)