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プロバイダ責任制限法とDMCAを比較


今回の記事は日本とアメリカの法律の良し悪しを論じる意図はなく、「こういう違いがある」と示すためのものです。

アメリカに本社が所在するYouTubeやその他SNSなどのサービスでは、いちサービスプロバイダがアカウントの永久凍結などのかなり強権的な手段をとることができることがたびたび話題になり、日本では考えられないと思っている人もいると思います。これは法律の違いによるものです。サービスによって日々膨大に発信される個々の情報についていちいちプロバイダが責任を負うわけにいかないので、プロバイダ責任制限法とDMCAはいずれも、サービスプロバイダにおいて発信される情報についての措置でプロバイダ側が免責される条件を定めたものです。

プロバイダ責任制限法(概要)DMCA
・権利侵害を信じるに足りる相当の理由がある場合(芸能人の写真の無断転載など)に送信防止措置により当該情報を削除できる。
・相当の理由を特定できない場合は発信者に意見照会をおこない、7日以内に意見が得られない場合は当該情報を削除できる。
・意見が得られた場合はプロバイダ側により、送信防止措置の有無を判断する。
・発信者情報の開示請求においても、発信者の意見照会が原則として必要であり、また権利を侵害されたとされる側は得られた発信者情報を不当に悪用してはならない。
・権利侵害の通知があった場合、ただちに当該情報を削除する。(ノーティスアンドテイクダウン)
・異議申し立てがない場合は権利侵害に当たらなくても削除されたままで問題ない。
・発信者が削除に対して異議を申し立てる場合、発信者本人または代理人(弁護士)の氏名と住所が必要である。
・異議の申し立てがあった場合、権利所有者(申立人)が10〜14営業日以内に権利の主張および削除の継続のために提訴した証拠を提出する必要があり、その証拠がない場合には削除された情報が復活する。

DMCAに関しては、アメリカ本国においても表現の自由やフェアユース(日本にはこれに相当する概念がないので難しいですが、日本の著作権法でいう私的利用や教育のための利用における著作権の制限をより拡大したものです)との兼ね合いが問題とされているそうです。

日本でも権利侵害情報(特に具体的には誹謗中傷)に関する規制の強化が議論されています。しかし、DMCAに定められたノーティスアンドテイクダウンのような方法は、ただちに削除されることが表現の自由の観点、異議申し立てに氏名と住所が必要なことについて表現の匿名性の観点、また発信者が権利を侵害していない場合の濫用の防止の観点に問題があるとされています。ノーティスアンドテイクダウンについて、日本では通信の秘密や表現の自由をより重視し、現時点で導入するのは適当ではなく慎重な検討が必要とされています。本当に誹謗中傷などの権利侵害の被害に遭われた方が以前のような大きな負担を伴わず被害を訴えやすくなるとしたら好ましいのですが、被害を訴える手続きのの濫用・悪用の防止についても重要になってくると考えられます。

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Posted in 権利侵害全般