行政書士の職業倫理にも関わり、また一般の方にも知ってもらいたいことなので扱うことにしました。
過去に投稿した「できることとできないこと」「業際問題」でも扱った、弁護士・弁理士・税理士・社会保険労務士・司法書士・土地家屋調査士・海事代理士および行政書士は、職務上請求として業務に必要な範囲で第三者の戸籍や住民票等の請求と取得が可能です。
関連リンク:
行政書士になるまでの記録 #8 「できることとできないこと」
行政書士になるまでの記録 番外編「業際問題」
「業務に必要な範囲」というのが重要であり、たとえば弁護士なら裁判所への申立て等の法律事務、行政書士なら官公署に提出する書類作成等に用いる場合のみ請求することができます。また、士業は2つ以上を兼業する方も珍しくないですが、例えば司法書士と行政書士の兼業の場合には登記供託や裁判所への申立てといった司法書士としての業務に行政書士の職務上請求書を用いることはできません。過去には興信所等の法人や個人による身辺調査でこれらの士業に職務上請求を依頼するケースがあったようですが、職務上請求「のみ」の依頼を受任することは各士業の倫理や規則に違反することになります。そのような依頼はしないでください。
職務上請求書はは各士業の所属する会(弁護士会、行政書士会等)から購入するようになっていて、購入枚数の制限や通し番号によって不正使用を防止しています。年度内の購入枚数が多いだけでも指導や調査の対象になり、不正の疑いを持たれないためには使用した職務上請求書の控えと通し番号を必ず記録しておく必要があります。また不正使用の疑いがある場合には職務上請求そのものの禁止、悪質な場合は懲戒というかなり重いペナルティがあります。紛失や盗難によって第三者に不正使用されるおそれがある場合には、決して隠蔽せず迅速に所属する会へと報告して不正使用を防がなければなりません。
第三者の戸籍や住民票等の請求ができるというのはこの個人情報保護が重要である現代においてはかなり強力な権利であるだけ、厳しい倫理と規則のもとに運用されていて間違っても不正な目的の依頼はしないでいただきたい、また不正な目的での利用はできないと知ってもらいたいという話でした。