これが出題されたことをものすごく伝えたかったのですが正式な合格通知まで我慢していました。
自力救済については過去に個人サイトでも言及していましたが、知財検定で頻出というわけではありません。民法が3級より2級ではより重点的に出題されるのですが、主に民法の契約規定が範囲とされています。「自力救済も出題の可能性があるのか」と思いました。
自力救済の禁止は民法で明文化されているわけではなく、判例などから原則として禁止とされているので、それが出題されたのもかなり意外です。
関連リンク:仮面ライダー俳優が言及していた「自力救済」とは
問題の問題はこちらです。(その表現でいいのか…?)

関連リンク:過去問題(第39回2級実技)
(公開期間の終了などで予告なく削除する可能性があります。)
常識的に考えてもわかると思いますが、不適切な選択肢はイです。これが、権利侵害やその可能性が高い行為に対して、裁判所や警察を通した正式な法的措置をとらず実力行使によって権利を回復する「自力救済」にあたるため不適切となります。契約違反を理由に相手方の倉庫で該当のブランドのタグを切り取るなどということは自力救済にあたり、やってはならないことです。
問題文が「契約締結後6カ月が経過しライセンス料の支払いが確認できていない。」、他の選択肢が「管轄裁判所に訴えを提起」「契約を一方的に解除」「損害賠償を請求」とあるので、これは民法の契約規定(より細かく言えば債務不履行)に関する問題ということになります。
ちなみに実際の判例で自力救済が問題となるのは、「不動産の賃貸借で家賃の滞納や不払いを理由に賃借人の家財を処分したり鍵を交換して追い出したりすること」が不法行為とされた例がいくつかあるようです。
筆者がしきりに「インターネット上でなんらかの被害に遭ったと思ったときに個人的に言い返したり報復したりしてはいけない」と言っているのは、マナー・モラル的な面もありますが、この「自力救済」にあたる可能性が高いからです。例えば、権利を侵害されたと思ったからといって正式な法的手続きをとらずに高圧的な態度で対処を指図したり示談金などを請求したり差し押さえをほのめかしたりすると、自力救済にあたるとして違法となる可能性があります。個人的な報復で度が過ぎたら自分が加害者になってしまう可能性もあります。
YouTube・Twitter・Instagramなど日本でもユーザーが多くアメリカに本部のあるサービスのヘルプでは、「身の危険を感じる場合は、最寄りの警察にご相談ください。(YouTube)」「他者からのツイートまたはメッセージが脅迫行為にあたると判断した場合、または自分や他の誰かの身に危険があると感じる場合は、最寄りの捜査機関に通報してください。(Twitter)」「あなたの知っている利用者に身体的な危険が差し迫っている場合は、最寄りの警察署に連絡してください。(Instagram)」など、差し迫った身の危険を感じるような被害が発生した場合は警察への相談や通報を勧めています。決して自分の実力行使で権利を回復したり、問題を解決しようとしないでください。