判決まであと1日。
判決までのまとめを動画にしました。特に休止していたつもりでもないのですがお久しぶりの動画になってしまいました。このサイトでもほぼ同じ内容を記載するつもりなのでお好きなほうをご覧ください。
裁判以前のできごとを含む今までの流れは次の通りです。
年月日 | できごと |
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2020/02/06 | 原告チャンネルY、被告チャンネルSからの著作権侵害申し立て通知により、2本の動画が削除される。 同日、チャンネルL及びチャンネルCCも著作権侵害申し立て通知により動画が削除される。 |
2020/05/08 | 原告チャンネルY、90日間経過により著作権侵害の警告解除。 「手遊び小町」顧問弁護士を通して被告チャンネルS・被告共同運営者YMに宛てて公開質問状を送付。 |
2020/05/20 | 期限だが、公開質問状に対する回答は得られない。 被告共同運営者YM名義で、当サイト運営者の個人サイトの前身であるブログに削除請求。削除請求を受け、サービス提供側からの意見照会に回答し、データ保持のために移転。これに前後して、この問題を知的財産権の面から解説した、複数のチャンネルに動画削除を強要。 |
2020/07/03 | 原告チャンネルY、YouTubeが推奨する問題解決の手段に基づき、「手遊び小町」顧問弁護士を通して京都地方裁判所に訴状を発送。被告に110万円の損害賠償を請求する民事訴訟を起こす。 |
2020/08/19 | 第1回弁論期日 原告は訴状にて主に次の主張。 ・著作権侵害については一切身に覚えがなく、どの部分が著作権侵害に当たるかを被告に問い合わせたが回答がなかった。 ・仮に似ている部分があったとしても元の作品が著作物と言えるほど独創性が高いとは考えられない。 ・著作権侵害の警告を複数受けてチャンネルが閉鎖されるリスクがあるため、90日間動画をアップすることができず、収益を得ることができなかった。これはYouTubeの著作権侵害通知による動画削除を乱用した行為である。 被告は答弁書で次のように反論し、争う姿勢。 ・弁護士に相談した上で著作権侵害の通知をした。 ・動画削除の判断をしたのはYouTubeである。 ・異議申し立てによって容易に動画を復元できた。 提訴を受けて、この件が各種メディアからも報道される。 関連記事:編み物著作権問題 ユーチューバー同士の裁判へ なお、「110万円の損害賠償請求を地方裁判所で起こし(原則として140万円以下の損害賠償請求は簡易裁判所が扱う)、3人の裁判官の合議制をとる」というのは異例である。 |
2020/08/30 | 原告チャンネルY、チャンネルCCの非公開になっていた動画が再び公開される。(チャンネルLはこれとは別個に異議申し立てにより2020年3月に動画が復元している) 理由は長らく不詳であったが、当事者尋問において、被告チャンネルSに対して補足情報が要求されていたことが明らかとなる。 このタイミングで復元した理由は今でも不詳。 |
2020/10/01 | 第2回 原告の準備書面で次のように反論。 ・ノーティスアンドテイクダウン方式によりYouTubeは著作権の有無や動画削除について責任を負わない。 ・被告が非公開にした「ご報告」と称して高圧的に著作権を主張する動画の内容から著作権について理解していないと考えられる。 ・どの弁護士と弁理士にどのような内容を相談したかが明らかでない。 関連記事:編み物ユーチューバー著作権裁判 第2回口頭弁論を傍聴 |
2020/10頃 | 係争中にもかかわらず、被告に都合の悪い動画に対する削除要請や都合の悪いSNS投稿に対する不当請求が発生する。 |
2020/11/25 | 第3回 被告の準備書面で次のように反論。 ・特許や商標の出願とそれに協力した弁理士について(実際には実名あり)。 ・ブログの著作権に関するガイドラインを依頼した弁護士について(実際には実名あり)。 ・被告が著作権について大手手芸店に問い合わせしたときの回答。 原告代理人から不足している情報の補充を要求。 関連記事:編み物ユーチューバー著作権裁判 第3回口頭弁論とこれまでの流れ |
2021/01/22 | 第4回 原告の準備書面で次のように反論。 ・特許や商標の出願や大手手芸店への問い合わせの回答は、被告の主張を補強するものとして体裁をなしていない。 また、裁判所より、「原告・被告双方の該当のYouTube動画の提出」および、「被告が具体的にどの部分を著作権侵害と捉えたのかを明確に主張すること」が指示される。 関連記事:編み物ユーチューバー著作権裁判 第4回弁論期日(リモート)と新しい展開 |
2021/03/09 | 第5回 被告が次のように反論。裁判になる前から追及していたことがやっと明るみになった。 準備書面がなく、被告の主張する証拠がそのまま裁判所に提出された形となる。 被告の主張が不十分なため、裁判所から次の期日に被告の準備書面を提出するよう指示。 ・原告に著作権を侵害されたと主張する証拠。 第4回の裁判所の指示に従い、以下の動画を提出。 原告:著作権侵害申し立てに遭った2本の動画のデータ 被告:著作権を侵害されたと主張している5本の動画のデータ なぜ2本の動画に対して侵害された動画が5本もあるのかは不明。 裁判所から、原告に対してYouTubeのシステムに関する補足説明の提出を指示。 関連記事:編み物ユーチューバー著作権裁判 第5回弁論期日(リモート) |
2021/04/23 | 第6回 前回不十分であった被告からの準備書面の提出。 ・被告の動画を参照しないと原告の動画が作成できなかったと考えられる。 ・原告は動画を復元するために異議申し立てができた(当初の答弁書と同様の主張)。 原告からの補足説明。 ・YouTubeの著作権侵害申し立て通知、異議申し立て通知などのシステムについての説明。 ・被告が異議申し立てを妨げる主張をしていた証拠。具体的には、異議申し立てをすると多額の裁判費用がかかるので示談で解決して誠意を見せろというコミュニティ投稿。(現在、該当の投稿は削除) 関連記事:編み物ユーチューバー著作権裁判 第6回弁論期日(リモート) |
2021/05/28 | 第7回 原告からの準備書面の提出。 ・被告は「異議申し立てをすれば動画を復元できた」と主張しているが、著作権侵害申し立て通知によって動画が非公開になる期間があり、異議申し立てに対して削除継続の証拠すら提出できない著作権侵害申し立てはただ単に原告のYouTubeチャンネルとしての信用や価値を毀損する行為である。 ・異議申し立てにおいてはアメリカの法律(DMCA)に即して申立人に住所と氏名を通知する必要があり、容易とはいえない。 ・被告はYouTubeコミュニティ投稿やブログで異議申し立てを妨げるような主張をしていて、不当な著作権侵害申し立てによって原告を含む複数のチャンネルの運営を妨害したと考えられる。 次回の弁論準備手続と当事者尋問の期日が確定。 関連記事:編み物ユーチューバー著作権裁判 第7回弁論期日(リモート)と当事者尋問へ |
2021/06/25 | 第8回 被告からの準備書面の提出。 ・異議申し立てをすれば動画を復元できた。 関連記事:編み物ユーチューバー著作権裁判 第8回弁論期日(リモート)と弁論の終了、当事者尋問へ 次回2021/07/27(火)13:30〜当事者尋問 |
2021/07/27 | 当事者尋問 原告チャンネルYのおもな主張 ・異議申し立てをしたかったが、被告に個人情報を知られるのが怖かった ・著作権侵害の警告によるチャンネル閉鎖のリスクを恐れた ・被告の動画を参考にした事実はない 被告チャンネルSのおもな主張 ・原告が侵害箇所に心当たりがないというのはうそであると思った。 ・動画は著作物であると考えている。 ・自分が被告であることや悪者扱いされていることが不快である。 被告共同運営者YMのおもな主張 ・YouTubeチャンネルについては被告Sに一任している。 裁判官より、和解の可能性がないことを改めて確認される。 関連記事: 編み物ユーチューバー著作権裁判 当事者尋問(当日の速報) 編み物ユーチューバー著作権裁判 当事者尋問に関する追記と総括(翌日のまとめ) |
2021/10/05 | 結審 原告最終準備書面のおもな主張 ・被告が著作権侵害されたと主張している編み方は編み物をする人の中で一般的なものであり、被告が独自に考えた著作物として認められるとは考えにくい。 被告最終準備書面のおもな主張 ・動画を削除したのはYouTubeである。(当初から再三に渡って主張しているもの) 民事訴訟の判決は原則として結審から2ヶ月以内に言い渡されることとなっているが、約2ヶ月半後となる2021/12/21の判決言い渡しというこれまた異例の期間を要することとなる。 関連記事:編み物ユーチューバー著作権裁判 結審と年内の判決へ |
2021/12/21 | 判決 民事訴訟では主文のみの言い渡しとなる。例えば次の通り。 原告全部勝訴:「被告は、原告に対し110万円を支払え」「訴訟費用は被告の負担とする」 原告一部勝訴:「被告は、原告に対し〇〇(110万円未満)円を支払え」「原告のその余の請求を棄却する」(訴訟費用は割合によって配分される場合が多いためあまり定型文がない) 原告敗訴:「原告の請求を棄却する」「訴訟費用は原告の負担とする」 |
110万円の損害賠償請求を地方裁判所に起こす、3人の裁判官による合議制、結審から判決まで2ヶ月超という異例づくしの裁判なので、今後の編み物文化やYouTube文化に影響する重要な判例になることが予想されます。判決では主文しか読み上げられませんが、おそらく判決理由もYouTubeに関する問題の判断基準になりうるものとなると考えています。明日はなるべく速報をお伝えしたいと思います。