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編み物ユーチューバー著作権裁判 弁論準備手続のまとめ


当事者尋問が明日に迫っています。第1回弁論期日から、その後7回にわたるリモートを含めた弁論準備手続をまとめました。

過去の関連記事のリンク

便宜上「弁論期日」としていますが実際には弁論準備手続であるものも含みます。また、「2020年を振り返る」には2020年以前のできごとも含む裁判に至るまでの流れをまとめています。今回は裁判が始ってからの内容に絞ります。
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関係する人物

被告チャンネルS・被告共同運営者YM
今回の問題の発端となった人物。法的に認められる可能性が低い著作権を主張し、YouTubeの著作権侵害申し立てシステムを乱用して他の複数のチャンネルの動画を削除に追いやった。本業は古物商のようだが、運営の実態は乏しいと考えられる。

原告チャンネルY
動画を削除された被害者の1人で、編み物ユーチューバー著作権裁判の原告。

チャンネルL・チャンネルCC・チャンネルCP・チャンネルA
原告以外で同様の著作権侵害申し立てによる削除、または動画削除の強要に遭った被害チャンネル。現時点では動画が元に戻ったチャンネルも含む。

弁論準備手続

民事裁判では、特にコロナ禍による傍聴制限もあり、第1回以外の弁論については口頭弁論期日を設けず、非公開・リモートでも可能な弁論準備手続によって進めることが一般的であるようです。

年月日できごと
2020/07/03原告チャンネルY、YouTubeが推奨する問題解決の手段に基づき、「手遊び小町」顧問弁護士を通して京都地方裁判所に訴状を発送。被告に110万円の損害賠償を請求する民事訴訟を起こす。
2020/08/19第1回弁論期日
原告は訴状にて主に次の主張。
・著作権侵害については一切身に覚えがなく、どの部分が著作権侵害に当たるかを被告に問い合わせたが回答がなかった。
・仮に似ている部分があったとしても元の作品が著作物と言えるほど独創性が高いとは考えられない。
・著作権侵害の警告を複数受けてチャンネルが閉鎖されるリスクがあるため、90日間動画をアップすることができず、収益を得ることができなかった。これはYouTubeの著作権侵害通知による動画削除を乱用した行為である。

被告は答弁書で次のように反論し、争う姿勢。
・弁護士に相談した上で著作権侵害の通知をした。
・動画削除の判断をしたのはYouTubeである。
・異議申し立てによって容易に動画を復元できた。
提訴を受けて、この件が各種メディアからも報道される。
2020/08/30原告チャンネルY、チャンネルCCの非公開になっていた動画が再び公開される。理由は不詳。
2020/10/01第2回
原告の準備書面で次のように反論。
・ノーティスアンドテイクダウン方式によりYouTubeは著作権の有無や動画削除について責任を負わない。
・被告が非公開にした「ご報告」と称して高圧的に著作権を主張する動画の内容から著作権について理解していないと考えられる。
・どの弁護士と弁理士にどのような内容を相談したかが明らかでない。
2020/10頃係争中にもかかわらず、被告に都合の悪い動画に対する削除要請や都合の悪いSNS投稿に対する不当請求が発生する。
2020/11/25第3回
被告の準備書面で次のように反論。
・特許や商標の出願とそれに協力した弁理士について(実際には実名あり)。
・ブログの著作権に関するガイドラインを依頼した弁護士について(実際には実名あり)。
・被告が著作権について大手手芸店に問い合わせしたときの回答。
原告代理人から不足している情報の補充を要求。
2021/01/22第4回
原告の準備書面で次のように反論。
・特許や商標の出願や大手手芸店への問い合わせの回答は、被告の主張を補強するものとして体裁をなしていない。
また、裁判所より、「原告・被告双方の該当のYouTube動画の提出」および、「被告が具体的にどの部分を著作権侵害と捉えたのかを明確に主張すること」が指示される。
2021/03/09第5回
被告が次のように反論。裁判になる前から追及していたことがやっと明るみになった。
準備書面がなく、被告の主張する証拠がそのまま裁判所に提出された形となる。
被告の主張が不十分なため、裁判所から次の期日に被告の準備書面を提出するよう指示。
・原告に著作権を侵害されたと主張する証拠。
第4回の裁判所の指示に従い、以下の動画を提出。
原告:著作権侵害申し立てに遭った2本の動画のデータ
被告:著作権を侵害されたと主張している5本の動画のデータ
なぜ2本の動画に対して侵害された動画が5本もあるのかは不明。
裁判所から、原告に対してYouTubeのシステムに関する補足説明の提出を指示。
2021/04/23第6回
前回不十分であった被告からの準備書面の提出。
・被告の動画を参照しないと原告の動画が作成できなかったと考えられる。
・原告は動画を復元するために異議申し立てができた(当初の答弁書と同様の主張)。
原告からの補足説明。
・YouTubeの著作権侵害申し立て通知、異議申し立て通知などのシステムについての説明。
・被告が異議申し立てを妨げる主張をしていた証拠。具体的には、異議申し立てをすると多額の裁判費用がかかるので示談で解決して誠意を見せろというコミュニティ投稿。(現在、該当の投稿は削除)
2021/05/28第7回
原告からの準備書面の提出。
・被告は「異議申し立てをすれば動画を復元できた」と主張しているが、著作権侵害申し立て通知によって動画が非公開になる期間があり、異議申し立てに対して削除継続の証拠すら提出できない著作権侵害申し立てはただ単に原告のYouTubeチャンネルとしての信用や価値を毀損する行為である。
・異議申し立てにおいてはアメリカの法律(DMCA)に即して申立人に住所と氏名を通知する必要があり、容易とはいえない。
・被告はYouTubeコミュニティ投稿やブログで異議申し立てを妨げるような主張をしていて、不当な著作権侵害申し立てによって原告を含む複数のチャンネルの運営を妨害したと考えられる。
次回の弁論準備手続と当事者尋問の期日が確定。
2021/06/25第8回
被告からの準備書面の提出。
・異議申し立てをすれば動画を復元できた。
次回2021/07/27(火)13:30〜当事者尋問

争点に関係するところとしては、当事者尋問の被告反対尋問(原告代理人弁護士による尋問)で「異議申し立ての10営業日の猶予期間に削除を継続する証拠を提出できたか」「証拠を提出せず動画が復活するに任せるつもりだったのか」については追及されるのではないかと考えています。

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