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編み物ユーチューバー著作権裁判 結審と年内の判決へ


あと40日ですが本日はもっと重要なことがあるので行政書士シリーズはお休みです。

予定通り本日で結審(弁論の終了)となり、判決の言い渡し期日も決まりました。民事訴訟法の上では、判決の言い渡し期日は原則として結審から2ヶ月以内とされていますが…。
動画について、今回は原告代理人弁護士が京都地方裁判所に行っているため、手遊び小町代表からライブ配信をしました。画像のブレが多かったため、ライブ配信の動画は非公開とし、音声とテロップのみの動画となっています。

結審では原告・被告双方から最終準備書面を提出することとなります。最終準備書面において、原則として新たな主張をすることはありませんが、当事者尋問で当事者から聞き取った証拠について、原告は原告側の証拠の整理および被告側の証拠に対する反論、被告も同様に被告側の証拠の整理および原告側の証拠に対する反論をしています。

原告の最終準備書面(おもな主張)
被告が著作権侵害されたと主張している編み方は編み物をする人の中で一般的なものであり、被告が独自に考えた著作物として認められるとは考えにくい。

被告の最終準備書面(おもな主張)
動画を削除したのはYouTubeである。(当初から再三に渡って主張しているもの)

判決の言い渡しは2021/12/21(火)13:00と、なんとか今年中の決着となりました。原則は結審から2ヶ月以内ですが、次のように定められています。

ただし、事件が複雑であるときその他特別の事情があるときは、この限りではない。

民事訴訟法第251条ただし書

これに限らず法律の条文はただし書だらけなのですが(原則のみで成り立つほど単純なことは多くないからだと思います)、「事件が複雑であるときその他特別の事情があるとき」とされ、結審から約2ヶ月半後の判決言い渡しとなります。
元々、110万円の損害賠償請求を地方裁判所に起こし、それに対して裁判所が3人の裁判官の合議制をとること自体が異例づくしなので、これに先立つ判例のない裁判として原則を超える期間を必要とするようです。

民事訴訟の判決の言い渡しは当事者や代理人弁護士が出席する義務はないのですが、あくまで義務ではないだけです。
ところで、報道などで世間の耳目を集める刑事訴訟での判決では、例えば「被告人を懲役○年に処する」また日本では珍しいケースですが「被告人は無罪」といった主文のあとに判決理由、場合によっては被告人に対する訓戒が述べられます。例外として、特に死刑判決では裁判官が俗にいう主文後回しとして判決理由を先に述べることもあります(主文後回しは死刑の可能性が高いという認識が一般に広まったからか、検察から死刑が求刑されている場合は無期懲役などでも主文後回しにされることや、事件の性質上判決理由を先に述べることや、裁判官の癖などもあるようなので主文後回し=死刑ではありません)。

一方、民事訴訟の判決は裁判官によって主文のみが述べられ、判決理由などを含めた判決書は一般的には後日送達されることとなりますが、裁判所で当事者や代理人が受け取ることも可能です。
民事訴訟の場合の主文は、一般的には原告勝訴では「被告は、原告に対し○○万円を支払え」「訴訟費用は被告の負担とする」、原告敗訴では「原告の請求を棄却する」「訴訟費用は原告の負担とする」といった形式になるようです。例えば、編み物に関する珍しい判例である平成22年(ワ)第39994号、いわゆる三角形パズルベストに関する民事訴訟は第一審の東京地方裁判所で原告敗訴、また平成24年(ネ)第10004号で知的財産高等裁判所への控訴が棄却されています。これは編み物をする人から見ると被告に非があるように思えるところもありますが、一方で編み物が著作物として認められるのは非常に難しいということを示す判例であると思います。

この件の判決は昔からある編み方の組み合わせをみんなで楽しんだり工夫したり持ちつ持たれつで世界で発展していった編み物文化、自分のチャンネルの企画を他のユーザーにも提案したり人気企画を取り入れたり持ちつ持たれつで少なくとも日本では特に人気のあるチャンネル同士がむやみに争わず互いに成長し合って成り立ってきたYouTube文化の両方に影響する判例となることが期待されます。あとは裁判所の判断に任せるしかないところまできましたが、判決までを見届けましょう。

Posted in 編み物ユーチューバー著作権裁判