インターネット上に完全な非公開なんてありませんね。下手に噂や憶測が広まるのもよろしくないので事実と一般的な今後の流れをまとめました。
(2022/01/06 23:50追記:文中で今年なのに2021年になっていた箇所を2022年に訂正しました。筆者もまだ2021年気分が抜けていないようです。)
「タイトルが出オチだなあ」と思ったのですが出オチという言い方は少々軽すぎて不適切かと…でもタイトルの通りです。
被告側が判決から遅くとも2〜3日以内には判決書を受け取ったとして、2週間の控訴の期限はだいたい今週いっぱい程度になるのでそのあたりで控訴の有無を確認することを想定していました。
しかし被告チャンネルSがイタリア語で高等裁判所への上訴をしたことを述べている(何言ってるかわからないと思いますが詳しくは昨日の記事を参照)見過ごせないコメントがありました。この事実確認の目的もあり本日になってから原告代理人弁護士を通して京都地方裁判所に確認したところ、被告からの控訴状を京都地方裁判所が受け取っていることが明らかになりました。
関連記事:編み物ユーチューバー著作権裁判 さらに飛躍した独自の見解
判決の当初は被告に控訴を勧めたら嫌がらせになるらしかったのにどういう心境の変化なのかは不明です。とりあえず以下では民事訴訟法や民事訴訟規則に基づく、また高等裁判所における民事訴訟の控訴審の例による一般的に想定される今後の流れについて書いていきます。
控訴審 今後の流れ
控訴状を第一審の裁判所に送付(←イマココ!)
第一審の判決に不服のある場合、判決書の送達を受けた日から2週間以内に控訴状を第一審の裁判所(今回の場合は京都地方裁判所)に提出します。
控訴状は2週間というかなり短い期限があるため、「当事者及び法定代理人」「第一審判決の表示及びその判決に対して控訴をする旨」を記載して控訴をする意思のみを表示することが多いようです。
控訴状に不備がある場合には控訴そのものが却下されることもありますが、不備による却下はあまり想定しにくいです。しいていえば次に挙げる控訴理由に関する書面の提出が期日内に間に合わない場合は却下となります。
控訴理由に関する書面の提出
控訴状に第一審判決の取消し又は変更を求める事由の具体的な記載がないときは、控訴人は、控訴の提起後五十日以内に、これらを記載した書面を控訴裁判所に提出しなければならない。
民事訴訟規則第182条
おそらく記載がないのが一般的だと思われるので、控訴人(第一審の被告両名とその代理人弁護士)が50日以内に第一審判決の変更を求める事由を控訴裁判所(この場合は大阪高等裁判所)に提出します。被告チャンネルSによるYouTubeのコメントをとりあえず信じるとしたら2022/01/04の控訴提起として、2022/02/23が50日後にあたるのでそのあたりまでとなります。
(2022/01/07追記:控訴に関する事実確認をしたところ2022/01/04の控訴提起のため、控訴理由書の提出期限は上の通りであるようです)
(2022/02/25追記:50日後が祝日のためその翌日の2022/02/24)
被控訴人からの控訴答弁書の提出
控訴人が上の書面で主張した事由に対して、裁判所が指定した期日(およそ1ヶ月程度?)までに被控訴人(第一審の原告とその代理人弁護士)の主張を記載した書面(控訴答弁書、反論書)を提出することができます。
また、控訴では原則として控訴人が第一審より不利益になるような判決の変更(例えば今回のような被告側からの控訴の場合なら損害賠償の金額の増加など)はできないのですが、控訴された場合には2週間の控訴期限以降にでも被控訴人が附帯控訴を起こすこともできます。
控訴審
原則として第一審での弁論や証拠をもとに控訴理由書と反論書を加え、第一審に対して当事者の不服により変更を求める限度においてのみ弁論をおこない、事実と法律の適用を審査します。裁判所の公式サイトなどで、第一審がそのまま継続したものと説明されていることが多いです。
そのため、民事訴訟の控訴審では多くの場合は一度の弁論期日で結審し、和解の勧告または判決に至ることになります。民事訴訟の控訴審では第一審を前提に取消しや変更が必要かどうかを審理するため、1年以上の長期間を要する第一審と比較すると数ヶ月ほどのかなり短期間で終結に至ることが多いようです。
判決
第一審判決を相当とする場合は控訴棄却されます。字面から誤解されがちですが「棄却」も判決です。
第一審判決が不当や違法な場合には第一審判決が取消しや変更されることがあります。
控訴棄却の場合において、控訴が判決の確定を妨げるために行われたと判断された場合には次のような定めもあります。
(略)控訴人が訴訟の完結を遅延させることのみを目的として控訴を提起したものと認める時は、控訴人に対し、控訴の提起の手数料として納付すべき金額の十倍以下の金銭の納付を命ずることができる。
民事訴訟法第303条(控訴権の濫用に対する制裁)
そして…?
高等裁判所まで持ち込まれたらたとえ棄却判決でも判例としてはさらに法律の学習者や実務家にとって重要になることとは思います。
控訴棄却でも最高裁判所へ上告することは不可能ではないのですが、最高裁判所は高等裁判所や地方裁判所とは役割が異なり法律問題に関する審理をおこなうため、理由がないとされたら却下や不受理となる可能性があります。
どの段階までにせよもしかしたら歴史に残る判例と言っても過言ではないかもしれません。また、とりわけ編み物に興味があるわけではなくても報道などから関心を持ち始めた方もいるようです。もう少し長くなりそうですが見守りましょう。