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編み物ユーチューバー著作権裁判 判決文の読み方


昨日は速報と記号の置き換えにとどまっていたので判決文の読み方をもう少し掘り下げます。

20ページと長く、その中に前提事実、当事者双方の主張、裁判所の判断が入っているので読み解きにくい部分もあると思います。
関連投稿:編み物ユーチューバー著作権裁判 裁判例検索に掲載
関連リンク:令和3年12月21日  京都地方裁判所

主文

被告らに約7万円の損害賠償の支払いを命じるなど、判決の最も重要な部分です。

事実及び理由

第1 請求(1ページ)

原告側の当初の請求です。約118万円の請求を求めていますが、日本の損害賠償請求の民事訴訟では全額が認められることは稀なようです。

第2 事案の概要(1ページ〜10ページ)

YouTubeでの著作権侵害通知による動画削除を不法行為として原告が損害賠償を請求したことをはじめとして、次のようなことが書かれています。

1 前提事実

原告・被告双方の当事者について、YouTubeのシステムについて、原告動画の削除についてといったこの裁判で争点とならない前提事実について述べられています。

2 争点

「本件侵害通知による不法行為責任の成否」「被告YMの責任の有無」「損害の発生及びその額」「過失相殺」の4つです。

3 争点に関する当事者の主張

この項目は先の4つの争点に関する原告及び被告のこれまでの主張をまとめたものです。これだけで判決文のかなりの部分を占めます。

本件侵害通知による不法行為責任の成否
原告:著作権侵害通知による動画削除は原告の権利利益を侵害するものであり、被告Sが不当な圧力をかけて著作権侵害通知を悪用し、著作権の有無を確認せず著作権侵害通知をしたことについて重大な過失がある。
被告:法律上保護される利益が侵害されたとはいえない。また、被告Sは弁理士や弁護士に相談して著作権侵害通知を送信した。

被告YMの責任の有無
原告:被告YMは被告Sの著作権侵害通知等に積極的に関与していた。
被告:被告YMは著作権侵害通知に関与していない。

損害の発生及びその額
原告:精神的苦痛、経済的損害、弁護士費用を合わせて相応の金額である。
被告:否認ないし争う。

過失相殺
過失相殺とは、原告に過失があった場合にそれを損害賠償の金額から差し引くことです。
原告:原告に過失はなかった。
被告:異議申し立てによって動画を復元できたため、原告に過失があった。

第3 当裁判所の判断(10ページ〜20ページ)

ここからが上記4つの争点に対する京都地方裁判所の判断です。

1 本件侵害通知による不法行為責任の成否

原告動画は,被告動画についての著作権を侵害するものではないと認めるのが相当であり,ほかにかかる認定を左右する主張立証は見出せない(なお,被告動画における編み方自体に関して,著作権を認めることができないことはいうまでもない。)。なおも原告動画が被告動画の著作権を侵害するというのであれば,それはもはや,編み方が同じ又は類似するものであれば,その説明方法の如何にかかわらず著作権侵害が発生するというに等しく,そのような主張ないし認識は被告ら独自のものと言わざるを得ない。

これは著作権侵害の有無について検討した部分ですが、かなりパワーがある判決文です。さらに次のように重過失の認定に続きます。

以上によれば,被告Bにおいては,編み物の編み方を説明した動画の著作権侵害の成否について法的問題があることを認識しながら,前記のような独自の見解に基づき,双方の表現方法の同一性又は類似の如何にかかわらず,あえて本件侵害通知を行ったものと認めるほかはない。かかる被告Bの注意義務違反の程度は著しく,少なくとも重過失があったと認めるのが相当である。

「独自の見解」というパワーワード。小括として不法行為責任が生じると認定されています。

2 被告YMの責任の有無

本侵害通知による不法行為につき,被告Dも,共同不法行為者(ないしは幇助者)として,被告Bと同様の責任を負うと認めるべきといえる。

インターネット上で公表されている判決文では被告B=被告S、被告D=被告YMです。
これは非公開の証拠が多くあまり詳細が書けませんが、被告YMは共同不法行為者(ないしは幇助者)として同様に不法行為の責任を負うことが認められました。

3 損害の発生及びその額

YouTubeにおける動画の投稿が,広告収益という経済的利益を目的とした活動の側面を有していることを踏まえても,動画の投稿・共有やこれを通じた他の利用者との関係によって,人格的な利益が生ずることは否定し難く,動画の削除やチャンネルの停止等により,こうした利益を享受できなくなることや,その可能性が具体的に生ずることにより,投稿者が精神的苦痛を受け,損害を被ることはあり得ると解される。

おそらくYouTubeのSNS的な側面と人格的利益を認めた画期的な判決です。
一方で、「原告の感じた精神的苦痛が特に重大であったと認めるに足りる的確な証拠」がないこと、「広告収益は,動画を投稿してから逓減するはずであるという被告主張」も認められることから認められた金額そのものは少額です。ちなみに、この裁判で被告の主張が明確に認められた部分は広告収益が動画投稿から提言するという箇所のみです。

4 過失相殺

原告が直ちに異議申し立てをしなかったことや後に代理人弁護士を通しておこなった異議申し立てが受理されなかったことについて、損害賠償から差し引くほどの過失はないと認められました。

第4 結論(20ページ)

これは判決の定型文のようなものですが、原告の主張で理由がある部分を認め、理由がない部分は棄却するという判決です。

Posted in 編み物ユーチューバー著作権裁判

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