今日は質の悪いまとめサイトのような記事になりますがご容赦ください。
筆者は本日、京都新聞・読売新聞・毎日新聞を買いに京都に行きました。
下に挙げたメディアの他、共同通信・Yahooニュースなどからも同様のニュースが配信されている場合があります。
また、配信元のメディアの都合上、しばらく日数が経過するとリンク切れになっている場合もあるかもしれませんがご了承ください。
おもな記事の紹介
編み物ユーチューバーらに賠償命令 著作権侵害していない動画の削除要請で | 京都新聞
いち早くネットニュースで公開された京都新聞の記事です。
独自の見解で通知した行為に著しい注意義務違反があるとして被告女性の過失を認定した。
判決後、原告側の代理人弁護士は、「ユーチューブにおいて、きちんと著作権侵害について調べずに通知すれば違法になりうると判断された。安直な通報をなくすことにつながるという点で社会的意義がある」と話した。
「独自の見解」というパワーワード。
もしかしたら「故意の通報」が認められなかったことに納得していない方もいるかもしれませんが、このたびの判決では被告チャンネルSの「重大な過失」が認定されました。重大な過失をキャッシュカードの盗難・不正利用というわかりやすい例でたとえると、本人自ら暗証番号を知らせた、本人自らカードを他人に渡した、暗証番号をカードに書いていたといったことがあてはまり、故意に近い重大な過失とされます。そのレベルの重大な過失と認められました。
原告代理人弁護士のコメントについて、YouTubeのみならず他のSNSでも嫌がらせ目的の安易な通報やアカウント凍結の抑止力になると筆者も期待しています。
ちなみに2021/12/22現在、京都新聞の京都・滋賀ローカルニュースのアクセスランキング1位でした。
不適切な動画削除要請で慰謝料命令 京都地裁判決 | 毎日新聞
地方での訴訟に比較的強い(個人の見解です)毎日新聞の記事です。
長谷部幸弥裁判長は「動画の投稿や、動画を通じた利用者との関係で生じる人格的利益が享受できなくなり、精神的苦痛を受けた」として慰謝料を5万円と認定した。
「人格的利益」について損害賠償が認められるのはものすごく難しいことだということを行政書士試験の学習で様々な判例を読んで学びました。有形の財産を損壊された場合の損害賠償すら簡単には認められにくいにもかかわらず、動画コンテンツという無形の財産、またそれに伴う人格的利益や精神的苦痛について損害賠償が認められただけでも異例です。そういった意味でも意義のあることだと思います。
被告による通知を「著作権の侵害になるという独自の見解に基づいていた」として重過失を認めた。
毎日新聞の記事では「被告の独自の見解による重過失」に触れられています。ありがたいです。
被告側の代理人弁護士は「判決文を見ていないのでコメントできない」としている。
やる気あんのか?と言いたい人もいるかもしれませんが、民事訴訟法では控訴の期限が判決書の送達を受けた日から2週間以内と定められているので、民事訴訟で不利な側の代理人弁護士が判決書をすぐに受け取らず目を通していないというのは想定の範囲内です。
編み物ユーチューバー訴訟 動画削除申し立てで賠償命じる|NHK 京都府のニュース
NHKニュース(動画付き)です。原告代理人弁護士の会見についてもかなりしっかりと要点が放送されたようです。
アイデア自体は、著作権法による保護の対象となるものではない。
あたりまえ体操(突然投げやりになってしまってすみません)。
原告側の弁護士が記者会見を開き、「ユーチューバーは何十時間もかけて動画を作るが通報1本で消えてしまうと、ショックは計り知れない。何も調べずに通報することは違法だと判断されたことで、安易な通報がなくなるのではないか」と話していました。
記者会見がどの程度放送されるだろうかと思っていましたが、このあたりもしっかりオンエアされていたようでありがたいです。
編み方動画に著作権なし、地裁「ユーチューブへの削除要請は過失」…7万円支払い命令 : 社会 : ニュース : 読売新聞オンライン
読売新聞の記事ですが、「編み方”動画”に著作権なし」というのは見出しの付け方としては正直言って疑問があります。
「技術や手法といったアイデアは、著作権法による保護の対象とはならない」とした上で、双方の動画について「編み方の説明や表現方法が類似しているとは認められない」と判断した。
裁判官の方々が当事者双方から提出された動画をかなり精査されていることがこの一文からおわかりいただけるかと思います。
各所の反応
SNSユーザーの反応
SNSでも、今まで関心を持って見守ってきた方々はもちろん、今までこの問題を知らなかったであろう士業やその受験生・法律学習者など法律への関心の高い方の反応がかなり見られました。おおむね原告に好意的な意見を述べている方が多く非常にありがたいです(裁判起こした割に認められた損害賠償の金額が少ないというのは…言われても仕方ないですね)。わざわざ取り上げると本当に質の悪いまとめサイトみたいになるのでやめます。
被告チャンネルSの反応
案の定、認められた損害賠償の金額が少額であることや訴訟費用の大部分は原告負担であることを殊更に取り上げ、被告が勝訴したかのような「独自の見解」を公表しています。前述の理由によりまだ被告代理人弁護士が判決書を受け取っておらず、判決文には目を通していないのではないでしょうか。原告の主張がほぼ全面的に認められた判決文に目を通したらどうなることかと思いますが、この調子なら控訴には持ち込まれず判決が確定する可能性が高いと前向きに考えています。