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編み物ユーチューバー著作権裁判 控訴審判決直前特集 前編


刑事訴訟だとたまに控訴審だけトンデモ判決出ることがあるけど民事訴訟でそれはないと思いたい

紛らわしい通称をつけてしまったなあ

実のところ著作権の有無は第一審でもまるで争点にはなっておらず、民法第709条の不法行為責任を問う裁判です。
関連リンク:令和3年12月21日  京都地方裁判所

突然の第一審判決パワーワード集

なおも原告動画が被告動画の著作権を侵害するというのであれば,それはもはや,編み方が同じ又は類似するものであれば,その説明方法の如何にかかわらず著作権侵害が発生するというに等しく,そのような主張ないし認識は被告ら独自のものと言わざるを得ない。

以上によれば,被告Bにおいては,編み物の編み方を説明した動画の著作権侵害の成否について法的問題があることを認識しながら,前記のような独自の見解に基づき,双方の表現方法の同一性又は類似の如何にかかわらず,あえて本件侵害通知を行ったものと認めるほかはない。かかる被告Bの注意義務違反の程度は著しく,少なくとも重過失があったと認めるのが相当である。

ちなみに旧民事訴訟法(1997年以前)の頃は、最高裁判所への理由のない上告を棄却するために「独自の見解」という言葉が頻繁に使われていたらしいです。
簡単に言うとおそらく裁判官を困惑させた場合に
現行の民事訴訟法ではそういったものはわざわざ法廷を開かず、決定で棄却されます。

論旨は、違憲をいう点を含め、独自の見解に立って原判決の法令違背をいうものにすぎず、採用することができない。

平成11年3月25日  最高裁判所第一小法廷 

見つけた中で最も一般的にわかりやすい表現のものですが、ほぼコピペに近い感じで同一の理由での判決や決定が多数あります。

著作権が争点にある程度関係するものの、著作権の部分を「独自の見解」としてバッサリと切り捨てている最近の判決文では次のようなものがあります。

原告の主張は,上記にいう美的創作性の該当性につき独自の見解に立って主張するものにすぎず,いずれも採用することができない。(中略)原告の請求のうち,著作権侵害及び著作者人格権侵害に係る部分は,いずれも理由がない。

令和3年12月24日  東京地方裁判所

原審及び当審で種々の主張をするが,いずれも当を得ないか,独自の見解であって,採用することができない。

令和3年10月28日  知的財産高等裁判所

控訴人は,前記第2の3(2)のとおり,被告文章は,原告イラストの最後のコマの「ルフィ」のセリフを受けて,あたかも連歌のように,直前の状況や内容を参看し,その背景や情趣,心境を踏まえて,そのポエジーを受け継いで記載されたものである旨主張するが,独自の見解というほかないものであり,控訴人主張のセリフ自体に表現上の創作性を認めることはできないし,ましてやそのセリフから連歌性やポエジーの存在を認め,被告文章が原告イラストに依拠した翻案に当たるなどと認めることは到底できない。

令和3年9月30日  知的財産高等裁判所

最後の判例、引用部分は比較的当たり障りがないのですが、ここに登場するキャラクター名の通り「既存の作品の二次創作であり」「同性間の」「性描写を含む」作品で何争ってるんだっていう内容なので若干の閲覧注意です。

控訴審のまとめ

2022/10/14(金) 13:20〜 判決言い渡しとなります。
2022年4月27日を第1回弁論期日として、民事訴訟の多くの控訴審での1回結審とは異なり原告と被告の両方に追加情報の提出が求められ、2022年7月29日に結審しました。
前例のない裁判であること、高等裁判所の判決はかなり今後に影響を及ぼすので慎重な判断となると考えられます。
関連リンク:
編み物ユーチューバー著作権裁判 控訴審第1回弁論期日
編み物ユーチューバー著作権裁判 控訴審の結審

大阪高等裁判所とインターネット

令和1(ネ)2126、いわゆる「リツイート名誉毀損判例」があります。
これはリツイートも名誉毀損とする第一審(大阪地方裁判所)判決を支持し、控訴棄却判決となったものです。
判決文としては個人情報は伏せられていますが、第一審原告/被控訴人は本人も弁護士であり大阪府で政治家をしていた人物、第一審被告/控訴人はジャーナリストであり、特に実名を伏せていない報道もあります。
38ページと控訴審としては長い、というか第一審より長い判決文です。当時と担当裁判官は違うとは思いますが、おそらくこのような慎重でもしかすると第一審よりも長い判決文になるかもしれません。
実際にこの判決は後発の類似の裁判でも基準になっているようです。
関連リンク:
令和2年6月23日 大阪高等裁判所
令和元年9月12日 大阪高等裁判所

Posted in 編み物ユーチューバー著作権裁判