明日宅建受けるからその勉強も兼ねている。
控訴審判決の速報についてはこちらです。
関連リンク:編み物ユーチューバー著作権裁判 大阪高裁での控訴審判決
昨日から今日にかけて、色々と速報性を必要とするニュースもあったからか、特にこの件について扱っているメディアは今のところ見つけることができていません。
速報性を必要とするタイプのニュースではないため、一審と同じくある程度時間が経ってから、また判決文が公開されてからなど、随時メディアに取り上げられる可能性があると考えています。
昨日の速報についていくつか補足します。
不法行為による損害賠償請求権の消滅時効
不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
民法第724条
一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
二 不法行為の時から二十年間行使しないとき。
刑事罰に時効があることはあまりにも有名ですが、不法行為による損害賠償の請求権にも消滅時効があります。
たとえばこの裁判より前に、一審被告Sの主張が正しいと思い込み動画削除を放置していたチャンネルがあるとします。実在するかは不明ですが、筆者や読者の方が認識していないだけで実在する可能性がありそうです。もしその動画削除から3年経っていたら請求できないのでしょうか。
ここで「損害及び加害者を知った時」の解釈ですが、判例では「被害者が損害の発生を現実に認識したとき」とすることが一般的です。一審被告Sの主張が正しいと思い込んでいる間は不法行為にあたるという認識に及ばないので、時効はその間は進行しません。一審被告Sに対して損害賠償を請求できる可能性があると認識したときから3年間ということになります。
つまり理論上はあと20年近く一審被告Sは他の人物から同じ件で損害賠償を請求されてもおかしくないということになります。生きたまま蝋人形の如く震えて眠れ明日はもうないさ 失礼しました、悪魔が出てしまいました。
法定利率
控訴人らは、被控訴人に対し、連帯して26万1514円及びこれに対する令和2年2月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
令和4年10月14日判決
「これに対する令和2年2月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。」の部分について質問がありました。
これは民法に定める債権全般に関する法定利率であり、この裁判では損害が発生した(一審原告動画が削除された)令和2年2月6日当時の法律に基づいて年5%です。ちなみに令和2年4月1日改正で年3%になっていますが、提訴が法改正以降であることとは関係なく、損害が発生したときの法定利率に基づいて計算します。ここテストに出ます。
一般には利息を生ずべきで特に利息についての意思表示のない債権について生じます。債権・債務というと一般には借金のイメージが強いですが、民法に定める債権の編には消費貸借(借金)のみではなく、売買などの契約全般に関する債権・債務が定められています。たとえば売買契約等に関して、支払う予定の金銭を期限までに支払わなかった場合(履行遅滞)の遅延損害金について別段の定めがない場合、年3%を基準に請求することになります。
不法行為が発生したときは、被害者に損害賠償を請求する債権、加害者に損害賠償を支払う債務が生じます。
そして判例によると、不法行為に基づく損害賠償債務は損害発生と同時に履行遅滞の責任を負うという解釈が一般的なので、当記事を書いている2022/10/15現在で損害賠償に対して既に約3万5000円の利息が生じていることになります。たぶんもっと増えるけど
ウーバーイーツ事故がやたら報道されてない?
ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
民法第715条
これは大阪地方裁判所に対する提訴に対して2022/09/30に成立した和解ですが、和解の場合には和解の詳細内容を秘密にすることを条件にすることができるので、偶然にも昨日明らかになり、昨日夕方から今朝にかけて各種メディアで報道されていたようです。
配達員を個人事業主としていて雇用関係にない場合ですが、「使用者等の責任」は雇用関係にあるかどうかを問わない判例も多いので、詳細がすべて公開される判決を良しとせず和解としたことも考えられます。
関連リンク:兄が弟に兄所有の自動車を運転させこれに同乗して自宅に帰る途中で発生した交通事故につき兄弟間に民法七一五条一項にいう使用者・被用者の関係が成立していたとされた事例