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編み物ユーチューバー著作権裁判 一審被告による上告とこれまでの流れ


肩と背中を痛めるのはつらいよ〜(やっと回復してきた)

2022/11/02付で一審被告(二審控訴人)から大阪高等裁判所に上告状の提出ががありました。
上告理由書が提出されない場合は却下となりますが、上告の理由が提出されて特に形式上の不備がない場合は最高裁判所において多くの場合は決定や口頭弁論を経ない判決による棄却、「判決に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があることを理由とするとき」等には口頭弁論が開かれます。
しかし、実際には上告の9割以上が決定や口頭弁論を経ない判決で棄却され、また最高裁判所そのものに裁判官が15人しかいないこと、棄却の期間について法律に特に定めがないことから、書面での通知まで数ヶ月はかかることが多いようです。
特に「判決に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があることを理由とするとき」等にあてはまることがなさそうなので、決定や口頭弁論を経ない判決で棄却された場合に特に一審原告側に大きな負担はないとは思いますが、しばらく判決が確定しないことになります。

一審判決、二審判決の判決文は次の通りです。
関連リンク:
令和3年12月21日  京都地方裁判所
令和4年10月14日  大阪高等裁判所

二審判決文がかなり早期に公開されたので、改めて判決文に即して流れを過去に遡ってまとめてみます。
要点解説はこちらです。
関連記事:編み物ユーチューバー著作権裁判 大阪高裁控訴審 裁判例検索に掲載

サムネイルのA〜Mの略称に加え、次の略称が新たに出てきます。
N:一審原告と同じく動画を削除されたチャンネル。当サイトで用いた略称ではチャンネルCC。
O:被控訴人被控訴人は単独のため文中ではこの略称は用いられてない。当サイトで用いた略称では原告チャンネルY。
P:一審被告S・一審被告YMの強迫により動画を自主的に削除したチャンネル。当サイトで用いた略称ではチャンネルCP。

今北産業

異議申し立てされたら
動画が復活する程度の
著作権侵害申し立てをするな!

裁判までの流れ

2019年頃

一審被告Sの「ご報告」と称して著作権に関する高圧的な動画の中での主張。
現在は非公開となっている、いわゆる聖書動画。
この動画を復元しないのは、おそらく動画そのものよりもコメント欄が(筆者の記憶する限り)被告両名にとってかなり不都合だからと考えている。

「盗作」疑惑の例として、器具の紹介といった単なる情報やアイデアの提供にすぎないものについても、先行して動画を投稿した以上はそのことで権利が生じており、先行動画を見ていなかったとしても確認不足にすぎず、必要に応じて法的処置をとる旨を述べた。

令和4年10月14日  大阪高等裁判所 17ページ

偶然同じになってしまった場合は著作権侵害になりません。
それ以前に単なるアイデアは著作物ではありません。

2020年1月頃

被告Sの動画に対して、許可を得ようとコメントしたチャンネルCP(判決文中のP)、また判決文中にはないもののチャンネルAに対して高圧的な態度を取り、動画を削除させる。
これについて、被告共同運営者YMがチャンネルCPに送ったメッセージの一部が判決文に引用されている。

「は~。旦那さんにまで頼んで弁護士立たせて?自分でケリつけたことない人なんですね?」「私ならすぐに相手の自宅まで行って話しますけど?一度痛い目見ないといけないみたいですね。」「こっちと「和解契約」結ぶなら話聞きますが?お話ならないなら詐欺で警察にも行けるお話ですが?いかがいたしましょうか?要返信」

令和4年10月14日  大阪高等裁判所 17ページ

それで自宅まで謝りに来るような人とも謝らせようとするような人ともあまり関わりたくないのは筆者だけだろうか。

2020/02/06

被告Sの申し立てにより、原告チャンネルYの動画2本、チャンネルLの動画8本、チャンネルCCの動画1本が削除される。

動画が削除されたのはあなたが気づかない間に知的財産を侵害したから

令和4年10月14日  大阪高等裁判所 18ページ

ありえない。

この後、チャンネルLの動画は異議申し立ての待機期間経過により2020年3月に、原告チャンネルYとチャンネルCCの動画は「追加情報が必要」として2020年8月(一審の第一回弁論期日の後)に復元された。

2020/02/08

YouTubeにおいてMとのチャンネル名で活動していた者(以下Mという。)も、上記イのPと同様、販売のため「minne」で出品していた作品につき、控訴人Bから著作権侵害で告訴する旨の連絡を受けて出品を撤回した。Mは、どこに聞けば誰に著作権があるのかさえ分からず、その後、仕方なく控訴人Dと示談契約をしたが、恐怖を覚え、その後、YouTubeに編み物の動画を投稿することを断念することとした。

令和4年10月14日  大阪高等裁判所 18ページ

判決文中で「M」とされているのは、主に動画投稿よりもコメントで一審被告S(=控訴人B)と交流していた人物である。
一審被告YM(=控訴人D)と示談契約をしたとのことだが、当事者尋問からすると被告両名から何らかの物品を買わされたと推測される。
それは示談契約なのか?

2020/07/03〜2021/12/21

京都地方裁判所での一審の提訴(訴状送付)から判決まで。
思えば長かった。

2022/01/04

一審被告両名による控訴。
しかし、一審判決のあとの被告Sの言動を考慮した結果、損害賠償の金額が増額する結果となったことが二審判決の中で述べられている。

原判決において控訴人らの指摘する被控訴人動画による著作権侵害が認められない旨判断された後も、被控訴人動画が控訴人動画の盗作であるかのような独自の見解に基づくコメントをYouTubeのチャンネルに記載していること(甲13、14、20、69~77)など、本件に現れた一切の事情を考慮すると、被控訴人が上記の人格的利益の侵害により受けた精神的苦痛を慰藉する金額は20万円を下らないというべきである。

令和4年10月14日  大阪高等裁判所 24〜25ページ

独自の見解ビーム。

今後のこと

最高裁判所で法廷を開く要素が思い当たらないので、二審判決に大きな変更を及ぼす要素がなさそうです。おそらく今後原告側に何かあるとしてもほぼ書面を受け取るだけになることが予想されます。
当サイトではタグが増えてきて見づらくなったり、記事が増えてきて見づらくなったり、タグが増えてきて見づらくなったり(2回目)しているので、YouTubeだけではなくインターネット上での誤解しやすい著作権トラブルなどを扱いつつ、筆者の本業(行政書士)にもつながるサイトとして近日中にリニューアル予定です。
とりあえず個人的なことで恐縮ですが肩を治します。

Posted in 編み物ユーチューバー著作権裁判