判決まであと2日。
判決がどうなるかを断言するのは法律の専門家こそ特に避けたい事柄で、筆者のようなそこまで専門性の高くない資格取得や合否待ちをしている者でもなおさらですが、こうなる可能性が高いかな?と思われるものはあります。
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
民法第709条
この「故意又は過失」「他人(この場合は原告)の権利又は法律上保護される利益」がいかなるものであるかを裁判によって判断することになります。この問題を当初から見ている人にとっては明らかに被告に故意か少なくとも重大な過失があるとか、原告の権利や法律上保護されるかどうかはわからないものの少なくとも得るはずだった利益が侵害されているとかいうように見えるとは思いますが、裁判でどの程度認められるかはわかりません。
このようなことを考慮すると筆者が最も可能性が高いと考えている判決は「原告一部勝訴」(110万円の損害賠償請求に対し全額ではなく一部が認められる)です。
この問題とは性質が異なるものの、誹謗中傷に対する損害賠償請求で原告一部勝訴になったところ被告が荒唐無稽な解釈をした例として、郡山簡易裁判所でのラーメン店損害賠償請求訴訟があります。
— らぁ麺 おかむら (@rkrbt0931) August 25, 2020
この投稿については次のような補足があります。
・「業務用スープを使用しているなどの名誉棄損の書き込み」とは、決して業務用スープを使用して作られたラーメン一般を貶めるものではなく、被告による誹謗中傷の程度の低さを端的に示す例であると考えられる。
・「上記の投稿者は(中略)事実と異なる投稿を続けており」とは、原告の110万円の損害賠償請求に対する11万円の支払いの判決について、被告が「原告の請求が9割棄却された」などと荒唐無稽な解釈をしていることを指す。
・判決の理由は、「原告に不利益が生じていない」「被告の社会的な発言力が弱い」という2点から相応の金額を示されたとされている。
つまり、編み物ユーチューバー著作権裁判でも原告が被った不利益がさほど大きくないと判断される、被告の言動の影響力が大きくないと判断されるなどして、損害賠償として認められるのが請求額より小さくなる可能性があります。元々、YouTubeが推奨する通りに民事訴訟での判断に委ねたことに意義があるので、仮に原告一部勝訴という結果になっても認められる損害賠償金額の多寡はたいした問題ではありません。
可能性が高いであろう「原告一部勝訴」という結果になった場合、このたびの被告両名の言動を思い起こすと、上のラーメン店損害賠償請求訴訟のように「原告の請求が○割棄却された」「被告側の主張が認められた」と解釈する可能性が皆無ではありません。
仮にそうなったら迷惑な話ではありますが、ものは考えようでそのほうが控訴に持ち込まれる可能性が低くなり、明後日の判決で確定する可能性が高いとも言えるかもしれません。法律学習者や法律実務家向けの判例集には最高裁判所判例が中心に載っていますが、もしかしたらこのような前例のない判例は地方裁判所レベルの判例でも掲載される可能性があるので、そういった意味でも注目しています。