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編み物ユーチューバー著作権裁判 元々は法律用語である「悪魔の証明」


突然ですが一昨日、昨日は更新をお休みしました。大学に合格してから10年。そして今日は…震災の不安の中で岡山駅のホームで希望を与えてくれた、九州新幹線全線開業から10年です(開業当日に見たと思っていましたが、写真の記録を見る限り帰りの2011/03/14に見たらしいです)。

そんなわけで、やや無理のある前振りですが、人間の記憶は本人や周囲の意図と無関係にいとも簡単に改竄されることを実感しました。こんなものを手放しに頼りにはできないので、やはりその時々に客観的な事実を記録していくのは大事だと思います。

筆者が尊敬する人…いや悪魔とは無関係ですが、編み物ユーチューバー著作権裁判において問題になる可能性が高い部分がこの「悪魔の証明」です。筆者は科学哲学関連からこの概念を知ったため前回の記事では宇宙人のたとえを使って説明し、あとで補足したのですが、元々は法律用語であるようです。
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元は「”悪魔は存在しない”ということを証明する」ことが困難というたとえから「悪魔の証明」と呼ばれるようになったようです。悪魔は存在するので元のたとえは適切ではないですね。

冗談はともかく、元々は土地などの不動産や物品などの有形財産の所有権に関する裁判で、所有権の存在を証明することが困難であることについて「悪魔の証明」という言葉が用いられていたようです。有形財産に関しても困難であるなら、知的財産などの無形財産についても、産業財産権のように登録を受けない限り所有権の主張は困難であるように思います。民事裁判の場合には、ある事実が存在しないことを証明することは困難なので、自分に有利な事実の存在を主張する側が責任を持ってその事実について証明する責任があるようです。

前回書いた通り、原告の主張は「被告の動画を参考にした事実はないから著作権侵害が発生しようがない」、被告の主張は「原告の動画で扱われている編み方をその時点で日本語で説明したのは自分しかいないから自分の動画を剽窃したに違いない」という、双方の主張が悪魔の証明じみた状況になっていることについて言及しました。そのため、双方とも相手の主張を崩す反証を持ち出すことが必要になっています。

原告は警告を受けた時点で「真似をしたつもりはないが、確認不足で模様が同じだった」という内容のブログ記事を投稿しているのですが、これはかえって原告にとって有利になるかもしれません。「著作権侵害とは厳密には著作権のうちの複製権侵害なので、偶然似たものは著作権侵害にならない」ということが主要な原則だからです。また「アイデア、方法、作風、技法、誰が考えても同様となるありふれた表現」は著作物として認められないことも重要です。一方で、被告が原告の主張を覆すような、他の海外動画や書籍を参考にしたのではなく自分の動画のみを剽窃したとすることを証明することは、「その過去の時点で他に参考になるものがないこと」を証明することに当たるため困難であるように思います。

被告の主張については、インターネットで海外の情報を簡単に入手できる時代、また編み物という言語が比較的障壁にならず動画を見ればやり方がわかるものであるため、「その時点で日本語で説明したのは自分しかいない」という主張の真偽を問わず、それだけで被告の動画を剽窃したとするのは無理があります。むやみに断定することはできませんが、原告のほうが他のチャンネルが紹介した編み方を証拠として提出するなど反証できる可能性が高いとして、被告が不利な状況にあることは否定できません。また、「悪魔の証明」とは話がずれますが、被告が原告以外のチャンネルから受けた異議申し立て通知に対してDMCAに定められた10営業日の猶予期間になんら法的措置を行わず、動画が復活するに任せていた点についても被告が著作権を主張していることとは矛盾があり、不利になる可能性があります。

未だ疑問点は多すぎるのですが、被告からの証拠提出により良くも悪くも状況は進歩しています。双方が悪魔の証明じみてきたので、相手の主張に対し反証できる可能性が高い側がこれから有利になると思われます。

Posted in 編み物ユーチューバー著作権裁判