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YouTubeのしくみ「ノーティスアンドテイクダウン」を知る


編み物ユーチューバー著作権裁判でも話題となったYouTubeの「ノーティスアンドテイクダウン」方式を詳しく説明します。

YouTubeの著作権侵害申し立てのシステムはアメリカ合衆国のデジタルミレニアム著作権法、略称DMCAに基づく「ノーティスアンドテイクダウン」方式を採用しています。以下は、日本の総務省のサイトに掲載されている解説です。

参考資料:ノーティスアンドテイクダウン手続について

ノーティスアンドテイクダウンとは、権利侵害を主張する者からの通知により、プロバイダが、権利侵害情報か否かの実体的判断を経ずに、当該情報の削除等の措置を行うことにより、当該削除に係る責任を負わないこととするものである。

つまり、権利侵害を主張する者からの通知(ノーティス:notice)があった場合に、プロバイダ(この場合はYouTube)が権利侵害の有無を判断せず当該情報を削除(テイクダウン:take down)することで、プロバイダは責任を負わないとされるということです。そして、有効な反対通知(YouTubeの場合は異議申し立て)に対して権利侵害を主張する者からの訴訟の提起がなく、動画が復活した場合にも、プロバイダは責任を負わないとされます。

ちょっと難しいですね。上の図を用いて、YouTubeでの実際の手続きを説明します。

YouTubeの場合

前提:権利侵害に関わる通知の送付先を明示する。(YouTubeの場合はこちら)[図①]

権利を侵害されていると思った人物(以下、申立人とする)が、正式かつ有効な削除通知(ノーティス:notice)を送信する。[図②]

YouTubeは権利の有無を判断せず、コンテンツを削除(テイクダウン:takedown)し[図③]、権利を侵害したとされる人物(以下、発信者とする)に通知を送信する[図④]。

発信者が権利を侵害していないと思っている場合、異議申し立て通知を送信する[図⑤]。

異議申し立て通知が正式かつ有効であれば、申立人に転送される[図⑥]。申立人がコンテンツの削除状態を継続するために裁判所への請求をおこなった証拠を提出するまでに、DMCAに定められた10〜14営業日の猶予期間が設けられる。
異議申し立て通知がない場合、異議申し立て通知に不備がある場合は、動画は削除されたままとなる。

猶予期間の間に申立人が証拠を提出した場合、動画の削除状態が継続され、訴訟によって権利侵害の有無を争うことになる[図⑦]。
猶予期間の間に申立人による証拠提出がなかった場合、動画が復元される[図⑧]。

以前から、「ノーティスアンドテイクダウン方式の乱用による動画削除」に悩まされるYouTube動画投稿者は後を絶たない状況でしたが、その多くが素性が不明の海外の詐欺グループなどによる被害であったため、国内の裁判でこの件が争われるのは初めてです。

編み物ユーチューバー著作権裁判について「YouTubeに責任はないのか」などという意見もみられますが、YouTubeは本部が存在するアメリカの法律に従った措置をとったにすぎないため、YouTubeが法的に責任を負うことはないと考えられます。むしろ、DMCAには「故意に理由を偽って削除申請を行った者は、削除申請を受けた者とサービスプラットフォームの提供者に対して費用の責任を負う」と規定があり、虚偽の申請をした者は動画を削除されたユーザーとYouTubeの両方から損害賠償を請求される可能性があります。YouTubeも、削除された動画から得られたはずの収益を失い、損害を受けた被害者であるという考え方です。

このたびの編み物ユーチューバー著作権裁判や関連する事例の流れについては以下の通りです。
原告チャンネルYは住所・氏名が相手に知られることや、3回目の警告でチャンネル停止になることを恐れ、異議申し立てを定められた期間内に行うことはできませんでした。被告チャンネルSが主張する著作権の所在が明らかでないため、YouTubeが推奨している通り、当事者同士で訴訟を起こすことになったという流れです。
また、被告チャンネルSの著作権侵害申し立てによって動画が削除されたチャンネルLは2020年2月下旬に有効な異議申し立て通知を送信し、2020年3月上旬に動画が復元されました。チャンネルL自らの発表で「10〜14営業日の待機期間」に言及されていましたが、これはDMCA、つまりアメリカの法律に定められた猶予期間ということになります。本当に著作権侵害があったならこの待機期間の間に証拠が提出され、削除状態が継続されるはずです。

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